全国の悩み生きる者たちへ、作家としても活躍する大槻ケンヂさんが率いるトラウマ派ロックバンド筋肉少女帯(以下、筋少)について語るシリーズ4回め。


・迎合への迷い(?)『エリーゼのために』



このアルバムから、なんとラブソングが増えます。当時、自傷癖を持つ女性とお付き合いしていたこと
とが明らかに関係していますが、「決して誰か1人のためには書いていない」とのこと。

後にGLAYやJUDY AND MARYを大ヒットさせることになる佐久間正英さんのプロデュースで、ポップでキャッチーな曲を作るのが得意なギターの本城さんがここから作曲に携わったことで、かなり売れ線というかわかりやすさを狙った作風になっています。

初期のホラーストーリーめいた狂気は薄れて、大槻さんのボーカルもなんだか優しくなり、ここで離れたファンも多かったそうですが、むしろここからの時期が好きな自分は珍しいのかもしれません。まあ、自分がかなりの後追いだからというのもあるのかもしれないけど。

吉幾三さんの『俺ら東京さ行ぐだ』ををラップ調にしてパロった『ソウルコックリさん』は、「吉幾三のパロディーを筋少でやるセンスが許せない」という抗議の手紙をいただいたそうな。まあ、2010年代に入ってからももいろクローバーZに提供した『労働讃歌』でまた吉幾三パロディーをやっているんだけど。

『戦え!何を!?人生を!』は、なんとライブで観客とコール&レスポンスを繰り返しながら作曲したという(だから作曲クレジットが「筋肉少女帯」名義)伝説の1曲。タイトルを連呼しまくり、後半では掠れぎみになるボーカルの迫力。実は、筋少でいちばん好きな曲は昔はこれでした。今はどれだろうな・・・。橘高さんの様式美が詰め込まれた泣きのギターソロもいいぞ。

次の『じーさんはいい塩梅』のほのぼのした雰囲気とファミコンっぽい音で一気にズッコケる(死語)流れも好きです。アルバム内でかなり浮いている短い曲ですが、なぜかPVが存在する・・・。「塩梅」という言葉はまあ今の若者・・・いや中年でもあんまり使わないと思いますが、例の当時の彼女さんの口癖だったそうです。


いい曲が多いのですが、なんとなく迷いが見える感じはします。大槻さんのエッセイふうにいえば、大衆に迎合した多くの人を楽しませるポップなヒット曲を生み出す方向性に行こうとして、まだ一歩だけ踏みとどまっているような。「このまま狂おうかそれとも生きようか」という一節はなんとなく、そういう気持ちを示唆しているように思えます。 


・迎合しました(?)『UFOと恋人』



とことんおバカ路線に突っ走った異色作。なんといっても1曲めのタイトルが『おサル音頭』。温泉で鼻歌で作ったという脱力ソング。


おサルとお風呂に入りたい
心のトラウマほぐしたい
おサルがお盆にお酒乗せ
熱燗注いでくれるのさ



いいねえ。そんな老後を過ごしたい。おサルの故郷だというボレボレ島まで船を漕いで行きましょう。ボレボレ島には幸福があると聞きます。

そんな優雅な時間を遮るように、猫に乗り移った宇宙人のドルバッキーが茶々を入れてくるのが先行シングルの『暴いておやりよドルバッキー』です。保険会社の年金プランのCMソングだったそうですが、何をどう考えても全く合っていません。大槻さんがひたすら「念写!念写!」と唱える保険のCM・・・シュール過ぎる。

様式美メタル『くるくる少女』は妄想に取り憑かれた少女の歌ですが、タレントとしての大槻さんしか知らなかった頃にこれ聴いたらネタ曲としか思わなかっただろうな。ネタ曲じゃないとわかると笑えなくなる。

『おサル音頭』に続くおバカソング『俺の罪』は「おサルになるから許してチョー」と開き直る愉快なナンバー。途中でいきなり大槻さんじゃないボーカルが入って、誰この人?と思っていたらベースの内田さんでした。温和そうな外見なのに声がめっちゃ野太くて最初はびっくりした。

『バトル野郎~100万人の兄貴~』はテレビゲーム『ストリートファイターⅡ』のCMソングで、ゲームが社会現象レベルで大ヒットしたのでシングルも売れて、歴代で2位の売上を誇ります。でも、曲じゃなくておまけのシールか何かが目当てで買った人が多かったとのこと。ジャケットもストⅡのイラスト。

『君よ!俺で変われ!』は、当時キリンが販売していたポストウォーターという清涼飲料水のCMソングで、替え歌の『君よ!ポストウォーターで変われ!』のCDが抽選でもらえるというキャンペーンも行っていたそうです。

3つのシングルはすべてタイアップ作品でありながら、それらを完全にdisった『タイアップ』が面白い。「コアなファン 捨てても欲しい タイアップ」・・・大企業と音楽の連動か。ちなみにこのアルバムの裏ジャケットは新聞記事を模したものなのですが、「ロックじゃ食えん!!」というコラム記事があります。ある意味で歴代最強に反体制な筋少のアルバムかもしれないな、これ・・・。


エセ関西弁で大槻さんがひたすらオカルト話をするラストの『バラード禅問答』がまたバカ過ぎる。人生の真理は次のアルバムに入っているとのたまっておられますが、そんなものは次のアルバムにもその次のアルバムにも入ってはいません。「ワイらのネクストアルバム!買うたってや!」・・・大槻さんはこのアルバムを、おサルの音頭で始まる日本ロック界で最もバカな作品と評していましたが、締めの歌詞が次のアルバムの宣伝で終わるのも前代未聞だと思う。


さて、ネクストアルバムは・・・。

この記事を書いた人


24-6

プラーナ

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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