今はそうでもないのですが、自分でいうのもアレですが、高校生の頃はそれなりに読書家でした。週に3~4冊のペースで読んでいたと思います。図書館は冬は暖かくて夏は涼しくて無料なので、お金のない自分の暇つぶしスペースには持ってこいだったのです。

その読書の幅たるや、芥川龍之介からフランス書院まで(フランス書院がわからない人はググってくれ)まで、という感じだったのですが、最終的に最もお気に入りになった作家が、清水義範先生です。


・清水センセイによる理科のお時間です。サイバラくん、私語は慎みなさい『おもしろくても理科』



おそらく最もヒットした著作。その後、社会・算数・国語と続く、通称「お勉強シリーズ」第1弾。漫画家の西原理恵子さんとのコラボ。

理科に苦手意識を持っている文系の人のために書かれたエッセイという触れ込み。頭があまりおよろしくないサイバラに理科について教える清水センセイ(サイバラさんはロクに聞いていない)という構図で、コミカルに展開していきます。

清水センセイもサイバラさんもしょっちゅう話が脱線するので、理科が得意というか詳しい人にはじれったい内容かもしれませんが、理科が苦手な文系側の人間であるところの自分には楽しめました。そもそも清水センセイご自身がどちらかといえば文系の方なので、考えの向きが近いのかも・・・。これがガチな理工系大学教授の方の著だったら眠かったかもしれないし、サイバラさんはもっと話を聞いていなかったと思います。

続編の『もっとおもしろくても理科』と2冊セットで楽しめます。清水センセイとサイバラさんのケンカ(?)が回を進むごとに激しくなって楽しめます。

公式解説『おもしろくても理科』
公式解説『もっとおもしろくても理科』


・普通のおっさんの普通すぎる生活『柏木誠治の生活』



第107回直木賞候補作。過去に何度か直木賞候補になっているようですが、結局は受賞することなく今に至ります。

柏木誠治という中堅サラリーマンの普通すぎる生活を書いた普通すぎる小説。ヤマはありますがオチはない。とりたてて優秀でもなくダメ社員というわけでもないおっさんの、目立たないけど冴えないわけでもない日々。

うっかり浮気めいたことをしかけたり、子供の反抗期がもうすぐ始まりそうだったりするのですが、いつまで経っても起承転結の「承」が続いていく。自分はまだ40代になっていないのでよくわからないけど、40代から50代の人間はこんな感じなのかもしれない。

公式解説『柏木誠治の生活』


・昭和の涼宮ハルヒ『パステル学園大乱戦』


主人公の通うパステル学園に転校してきた同い年のいとこ、麻衣子が茶道部を作るところから物語が始まります。女の子がたくさん入ってくると目論んで手伝った茶道部なのに、入ってきたのはむさ苦しい野郎ばっか。でも、その野郎どもは、(地味な)能力者だった・・・。

『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒロインのハルヒは自己紹介で「ただの人間には興味ありません!」とか言っちゃうちょっとアレな人ですが、麻衣子は無自覚に特殊能力を持つ野郎どもを呼び寄せています。だからちょっとヒロインとしては存在感が薄い。シリーズ化されていたら、もうちょっとキャラクターが浮き彫りになったと思うんだけど、この1冊で完結しているんですよね。

スケ番が出てくるのが時代を感じる・・・。後半はけっこう激しい展開なのですが、ジャンプの打ち切りマンガでいきなりバトルしはじめるのに似た感覚・・・。途中までは楽しくスラスラ読めるだけに残念。

偶然だし、ハルヒの方が15年くらい後なのですが、いくつか共通項があります。同じ角川書店から出ているし。ハルヒの新刊が待てない方は、これをちょっと読んでみるのも面白いかもしれません。めっちゃ昭和を感じるけど。

公式解説『パステル学園大乱戦』


・似非エッセイ『似ッ非イ教室』



エッセイ集。の振りをした似非テキスト集。

ボーっと読んでいると、あたかも普通に清水さんの日常生活や社会観や体調について書かれているように取れるのだけど、全部デタラメに書いた、という変わった短編集。当たり前のように「飼い犬のハム」が出てくるけど実際には犬を飼ったことはないらしいし、当たり前のように「セント二ベア」という国(インド洋にある離島らしい)が出てくるけどググってもそんな国は出ません。血圧値が380-23とかいうのはさすがに一発で嘘とわかったけど。

実際に騙された関係者もいるらしく、飼い犬を見せてほしいと雑誌編集者に言われたり、インド洋に旅行していたと思われたとのこと。

公式解説『似ッ非イ教室』


・デタラメパロディー集『国語入試問題必勝法』



第9回吉川英治文学新人賞受賞作であり、代表作。

国語教員免許を持つ清水さんが(これは本当)、国語入試問題に勝てる裏技を教えてくれるぞ。・・・というのが表題作です。『受験の帝王』というマンガの元ネタにもなりました。実際にどれだけ使えるかというと、ガチで半分くらいはそこそこ使えたりするから凄い。あと半分くらいは微妙。

マンガ図書館Z『受験の帝王』
マンガ図書館Z『帝王への道』

ちなみに『受験の帝王』とその続編の『帝王への道』も面白いのですが、元ネタ以上にメチャクチャなのでこちらは実践できそうにありません。のちにグロい麻雀マンガを描く作家さんとは思えないくらい平和な作品です。


『ブガロンチョのルノワール風マルケロ酒煮』などというふざけたタイトルから、この本のスタイルがどのようなものかなんとなくおわかりいただけるのではないでしょうか・・・。文庫版にのみ収録の『いわゆるひとつのトータル的長嶋節』は、野球界の超大物である「あの方」の口調でまるまる1編という、デタラメ感が満載のエッセイ。

公式解説『国語入試問題必勝法』


・ほかにもたくさん・・・。

そもそも作品数が膨大なので、自分もすべて読破したわけではないし、他にもおすすめはあります。また続きを書くかもしれません。

この記事を書いた人



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プラーナ

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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