あげはのとぶ日 渡辺守 ぶん 松原巌樹 え   新日本出版社

 全国学校図書館協議会 選定図書。

 あげはちょうは、姿こそ美しいですがれっきとした害虫です。みかんの葉や、からすざんしょうの葉を食い荒らします。
 今回は、そういう月並みな視点ではなく、あげはちょうという昆虫はどういう昆虫なのか、ということを紹介する絵本のお話です。

 

 あげはのとぶ日ということで、主人公はあげはとその幼虫です。林のなかに住んでいるとか。うちの近所では見かけたことはないですね……。だいたい、虫と言えばゴキブリかハエかカメムシですからね。うちの近所って、悲惨。
 この絵本を見ていると、そんな都会にいることを忘れて、自然の中に帰って行くような、ほっとひと息いれられるような、ぬくもりを感じます。



 絵本は、のっけから卵に寄生する話がありますし、葉っぱが硬くて食べられず、飢えて死ぬ虫もいるという、わりとシビアに書いてあるんですが、事実を淡々と書いているので、それほど強いインパクトは受けない気がします。子どもには少し、キツい話かもしれないけれど。

 あげはの幼虫が生き延びるために、いろいろと工夫しているところも書いてあります。幼虫は、小さい頃はなんの手も打っていないのですが、大きくなってくると、くさい臭いを出すツノを出して、敵を追っ払うと書いてありました。わたしも子どもの頃は、この臭い幼虫をつまんでしまって、ひどい目にあったことがあります。



 宮崎駿は、虫の短編映画を自分の美術館で放映したことがあったそうです。刺激の強い話だったので、子どもたちが泣いたという話を聞きました。夢いっぱいだけが宮崎駿じゃないんですねえ。

 ともかく、そんな幼虫でも、ハチやクモたちには、かっこうのエモノ。
 ハチは、カブリと幼虫を食べてしまいますし、クモも幼虫をエサにしてしまうそうな。
 ハチの中には、幼虫に注射をして、卵をうみつけて、さなぎになったところを喰い、春になったらハチになって出てくる、というものもあります。
 しっかり、そういう描写が、絵にありました。
 ―――えぐい。

 

 自然界のきびしい状況。天敵がやまほどいるため、200個卵を産んでも、生き残るのは
2匹だけ、なのだそうです。わたしはあげはに生まれなくて良かった(笑)

 いつも不思議なのは、あげはの幼虫がこんなにも姿が変わること。ゴキブリなんかは、小さい頃からぜんぜんかわりません。チョウチョ類は、なぜ、こんなにも姿をかえるのでしょうか?
 
 西洋では、昔から蝶は魂の象徴、とされてきました。人間という幼虫は、死んで死体というさなぎになり、蝶となって生き返るというのです。ロマンチックですが、一種のファンタジーです。人間は、ありのままを生きるのがいちばんです。

 この絵本では、あげはのほかに、しじゅうからやひよどりといった、鳥の絵も入っています。都会でも見かける鳥たちですね。近づくと逃げていく鳥たちですが、折りがあったらじっくり観察してみたいものです。自然と自分の間の関わり合いを実感できて、いいかもしれません。

 あすにゃん
  猫とお菓子と広島がすきです!
 漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。
 
 

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