『そらいろのたね』 なかがわりえこ 文 おおむら ゆりこ絵 福音館書店
ネットで、「おもしろい」という評価だったので、読んでみました。
主人公は、ゆうじという男の子。模型飛行機を飛ばしています。
そこへ森のきつねが駆けてきて、
「やあ、いいひこうきだなあ! ゆうじくん、ぼくに、そのひこうきをちょうだい」
と言うのです。
で、ゆうじは一度は宝物だからあげない、と断るんですが、きつねはポケットからそらいろのたねをひとつ取り出して、飛行機と取り替えっこしたのでした。
宝物どうしを交換するのは、『ポケモンGO』でもありますね。友だちどうしの暖かな交流が感じられます。そしてもちろん、話はそこでおわりません。
ゆうじは、そのたねを花壇にまいてしまいます。
水をやっていると、種は芽が出ます。
その芽というのは……。
空色の、家でした!
「ジャックと豆の木」でも荒唐無稽な豆の木が出てきますが、この絵本でも育つ家、というとんでもないアイデアが出てきます。
絵を描いているおおむら ゆりこさんは、すっかり楽しんでおられるようで、登場人物の表情も生き生きしています。
絵じたいは、いかにも64年に発行された本の絵、というほのぼの・懐かしい系なんですが、それがまた、このストーリーにマッチしています。
見たことのある絵だと思ったら、「ぐりとぐら」の絵の人なんですね!
どおりでかわいらしい動物が、たくさん出てきますね。
それに。
家が育っていくのを見てると、こういうのいいな、と思えてきますよ。
季節は春です。
たんぽぽの黄色い花が咲いていて、これから向かう初夏が想像されます。
ゆうじくんは半袖ストライプのシャツを着ており、きつねはシャツは着ていません。
ポケットの付いた釣りズボンを穿いてます。
その釣りズボンのおなかに、たんぽぽが挿してあります。
おしゃれなきつねですね。
飛行機が欲しい、なんて男の子らしいきつねくん。
そらいろのたねと飛行機をとっかえて、幸せが続くと思いきや、
地面から生えた家を見て、
「それはぼくのだ!」
ひどいことを言って、集まってきたみんなを追放してしまいます。
自分で育てないで、結果だけ奪おうとする話は、「さるかに合戦」でも見られます。
かきのたねとおにぎりを取り替えっこしたサルは、地道にかきを育てたかにを騙してかきの木に登り、かにを殺してしまったりするんです。
昔話のこのパターンを踏襲しているとしたら、この話の結末も、ちょっとこわいかも……?
ドキドキしながらページをめくります。
そらいろの家を独り占めしたきつねがどうなったのか。
ああ、なるほどなるほど、こりゃやられた、というオチが待ってます。
それにしても、そらいろのたね。
どんな進化をたどったら、こんな形になるんでしょう。
そして、このたねは、雌花? 雄花?
いろいろ知りたくなる絵本です。
あすにゃん
猫とお菓子と広島がすきです!
漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。
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