ともだちをたすけたゾウたち わしおとしこ文 遠山繁年 絵   教育画劇


 絵本・ほんとうにあった動物のおはなし

  東京都多摩動物公園で、実際にあったお話だそうです。
 事件は、昭和54(1979)年の5月から7月にかけて起きたそうです。3人のゾウ飼育係が目撃した物語。
 当時、動物公園には3等のゾウが飼育されていましたが、病気になったアヌーラというオスゾウをいっしょにいた2頭のメスゾウがおよそ2か月にわたって看病し続けた、という、信じがたいお話。しかもこの3頭は親子・兄弟・姉妹のような血縁関係はまったくなく、単に同じ動物舎でいっしょにくらしていただけの関係だった、のだそうです。



 動物が、赤の他人をたすける。
 たしかにゾウは、あたまがいい動物ですが、ふつうにはありそうにない話です。
 動物のファンタジーじゃありませんからね。
 イヌが人間を助ける話は、よく聞きます。
 けれど、野生生物が、おなじ野生生物を助けるなんて……。



 病気のアヌーラは、手当てをしたい動物舎の人々の、懸命な対処も拒否します。
 薬がはいったエサも、においでかぎつけて食べない。
 横になれ、と言っても、立てなくなるのが心配なのか、倒れて眠れない。

 2頭のメスゾウが、そのとき、両脇にそっと寄り添って、フラフラのアヌーラのために支えてあげます。
 しかも、それは一時的なものではなかったのでした。
 素晴らしいことに、アヌーラが完治するまで、それが続いたのです。



 この絵本を読みながら、アヌーラがよくなることはわかっていましたが、ハラハラしながら
ページをめくっていました。
 この、ほのぼのとした絵もステキ。
 飼育係のおじさんの表情とか、メスゾウやアヌーラなどの表情が、生き生きしています。
 多摩動物公園という場所もいい。
 東京は大都会。孤独になりがちですし、きらびやかなモノに囲まれて、ともすれば知らないものどおし助け合うことすら忘れがち。
 そんななかに、ゾウたちが立ちふさがって、「わたしたちは、違うよ」って言ってるみたいです。この話を掘り起こした人は偉い。



 アヌーラを助ける2頭のゾウは、雨の日もアヌーラを支え続けます。
 それは、ともすれば他人を押しのけがちな都会の人々に、反省をうながす姿勢であるかもしれません。
 関東では東日本大震災。関西では台風や地震。広島では大洪水がありました。
 そういうときに、やはり頼りになるのは自分だけではなく、助け合うこころなのです。
 ゾウが出来るんだから、人間だって出来ます。
 モノも大切ですが、こころも大切にしたいですね。




 あすにゃん
  猫とお菓子と広島がすきです!
 漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。
 
  

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