群馬県出身のロックバンドでヴィジュアル系の先駆けでもある、BUCK-TICK(以下B-T)について語るシリーズ14回め。前回の続きで、2009年の名盤『memento mori』について語ります。


・陽気と暗黒と驚きと力強さ『memento mori』

memento mori(初回生産限定盤)(DVD付)
BUCK-TICK
BMG JAPAN Inc.(BMG)(M)
2009-02-18


基本的に1アルバムにつき1シングルのB-Tとしては珍しく、今作と次作は1アルバムにつき2枚のシングルを出していて、今作のシングル曲『HEAVEN』と『GALAXY』は、どちらも優しく温かいドラマチックな曲で、前半に配置された『GALAXY』で一緒に飛び跳ね、ラストの『HEAVEN』で一気に癒されることができます。


生まれ 泣き叫び 笑い 愛し 恋を・・恋をしよう


'90年代にあれほど多かった「死」の気配はもうありません。だけどタイトルは「天国」。そして、歌詞は「胸に咲く 赤いカーネイション」で締めくくられる。

赤いカーネーションの花言葉は、「母への愛」だそうです。『狂った太陽』から『COSMOS』あたりまで、櫻井さんの歌詞に反映されていた、亡くなられたお母様への悲しみは、ここでひとつ昇華されたのだと思っています。実際はわからないけど。いずれ母のもとへ辿り着くまでには、死ぬまで生きろ、泣き叫べ、と。その途中で笑い、愛し、恋をしよう。


『アンブレラ』と『セレナーデ-愛しのアンブレラ-Sweety-』は、傘に恋をした蝙蝠のラブソング。ただ、太陽の灼熱に勝てずに、蝙蝠の恋は実らず、雨の中でひとり・・・、というストーリー。『アンブレラ』は'80年代ポップスっぽいクサさが癖になります。中森明菜さんの曲にありそう。

・・・とか思っていたら、今度は『勝手にしやがれ』と来た。'70年代後半。これはもう確実に狙って来ている。同名のフランス映画があり、さらにSEX PISTOLSの楽曲にもありますが、どちらかというと、ジュリーこと沢田研二さんのヒット曲の方だと思います。B-T世代でお化粧系と呼ばれた方々のほとんどは影響を受けているだろうし。

ジュリーさんの方は「せめて少しはカッコつけさせてくれ 寝たふりしてる間に出て行ってくれ」なのに対し、B-Tの方は「愛だとか恋とか要らない Give it to me  帰るんなら勝手にしやがれ Get out! Get out!」と、B-Tの方が投げやり感が強い。


タイトルチューンの『Memento mori』はどういう曲かというと・・・。沖縄民謡です。いやほんとに。BEGINかと思った。しかし・・・どうして沖縄?

かつてのシングル『ドレス』のカップリングは『六月の沖縄』という曲でした。雨という単語が出てくるので、「六月」はまあわかるのだけど、「沖縄」はあんまり関係なさそうな歌詞でしたが・・・。何か沖縄に思い入れがあるのでしょうか。あ、前回で言及したトージョー・ベイビーズとかの繋がりで、基地問題とかそういう?クローン羊とかナチスとか、意外にもB-Tは社会派だからな・・・。

「wowow wow oh~」という民謡的なコーラスに、今井さんの「Remenber to die!(メメントモリの英訳)」というシャウトが乗っかる不思議な曲。YMOの『ABSOLUTE EGO DANCE』のパロディーフレーズもあって、電子的な要素も持つという、まともな人はまあ作曲しなさそうな・・・。変態の今井さんだから仕方ない。


アルバム後半もまた攻撃的で、スリリングな『Jonathan Jet-Coaster』から流れるように駆け抜けていきます。小説『かもめのジョナサン』がひとつのモチーフだそうですが、自分は読んだことがことがないのでその由縁はよくわかりません。




どちらかというと、これ、昔から今井さんが好きなマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』なんじゃなかろうか。作詞したのは櫻井さんだけど。なんか、スタンド使いの歌に聞こえるんだけどなあ。「さあイケルゼイケルゼイケル」「ああ気付けばカラダは蜂の巣 ドクドク流れるVirgin Oil」・・・。俺は人間をやめるぞーーーッ!


思いっきりDEEP PURPLE『SMOKE ON THE WATER』なギターリフを、もうええわ!っていうくらい繰り返す(まあリフだからね)『スズメバチ』は、とても愉快で変態でブッ壊れたステキな曲。「ブンブンブン ハチが飛ぶ~♪」はさすがに空耳だろと思っていたら本当にその通りの歌詞なの笑った。童謡の『ぶんぶんぶん』は、もとはドイツ民謡なのだそうです。日本語訳での『ぶんぶんぶん』は、お池の周りのハチさんを眺めているだけですが、ドイツ語の原曲『Suum,Suum.Suum』は、ハチ」よこっちに来い、とハチさんを誘っています。・・・スズメバチはこっち来んな・・・。


『Lullaby-Ⅲ』は前々作のゴシックな作風を彷彿とさせる曲で、タイトルも前作の収録曲『Lullabt-Ⅱ』の続編っぽいですが、特に発展形というわけではないそうです。2002年のアルバム『極東I LOVE YOU』の時期のアウトテイクだったそうで、世に出るまで7年近く寝かされていた曲。次の『MOTEL 13』とセットで暗黒サイドなB-Tが楽しめるので、真ん中の曲目が陽気すぎて疲れた人はここで闇に堕ちましょう。



終盤の『天使は誰だ』は、ジョン・レノン暗殺事件について触れています。「リボルバー」という単語が出てきますが、これはビートルズのオリジナルアルバム『REVOLVER』はもちろん、自身の前作『天使のリボルバー』にも言及しているのでしょうね。前作のラスト曲『REVOLVER』のアンサーソングなのかもしれません。まあ、バッドエンドだけど・・・。

ビートルズの『REVOLVER』は、サイケデリックなモノクロイラストのジャケットでも有名なやつですね。

REVOLVER / LTD.EDITION
BEATLES
APPLE
2014-01-17


メンバー内で特にビートルズに影響を受けているのはドラムのヤガミさんとギターの星野さんなのだそうです。ビートルズといえばマッシュルームヘアが思い浮かびますが、後期は長髪になり髭を伸ばしたりもしていたそうで、一時期の星野さんは髭をかなり伸ばしていましたが、もしかしてその影響なのかも。ただ、星野さんは似合うけど、櫻井さんの髭はあんまり似合っているとは言いづらかったなあ。魔王は髭なしの方がいいよ。髭があると男爵に位が下がってしまう。


このアルバムがリリースされた2009年の時点で、結成からは25年、メジャーデビューから22年。20年超えのキャリアとは思えない勢いを感じる、そして、暗黒なB-Tが好きな人もおちゃらけたB-Tが好きな人も満足できる、力強い名盤。タイトルの裏側にある(と勝手に読んでいる)「生を楽しめ!」というメッセージを受け取りながら、こんな乱世で今夜もビールを1杯・・・。



・歴代順に他のアルバムについても書いていますので、よろしかったら過去記事もお願いいたします! 


・CATALOGUE of Pullerna-BUCK-TICK全アルバム紹介シリーズもくじ-

この記事を書いた人


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プラーナ

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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