お月さまってどんなあじ?
                              マイケル・グレイニエツ 絵と文 いずみちほこ訳

お月さまってどんなあじ?
マイケル・グレイニエツ
セーラー出版
1995-09-09


                              
 お月さまってどんなあじなんだろう。あまいのかな。しょっぱいのかな。
 という冒頭ではじまるこの絵本。
 想像もしない視点なので、驚いてしまいました。
 だって日本では、お月さまといえば「眺めるもの」です。
「月月に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」
  という短歌もあるくらいです。
 この短歌の意味は、毎月一五日頃は満月で月の見頃だけれど、九月十五日は特別だよって意味らしいです(うろ覚え)。

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 あるいは、『かぐや姫』のように、別世界から照らしてるものだと思ってるかもしれません。
 かぐや姫は、月からの使者に迎えられて、月へと帰って行きました。
 という日本の文化から見ると、月の味というのは、かなり衝撃的な発言だと、わたしには思えます。やはり外国人の感覚は違う。




 食欲旺盛な動物たちが出てきます。
 どんな味だろうと疑問に思っているカメは、まずは大きなゾウをさそって、月に手を伸ばします。食べてみるつもりなんだってさ。絵本には、カメの上に載っているゾウの絵が描かれています(重そう……)。手が届きそうになった月は、おもしろくなってひょいっと逃げてしまいます。ありそうだな。
 絵本をめくるたびに、違う動物が、違うアプローチで、月に手を伸ばしています。
 絵の動物たちの顔がなかなかひょうきんです。
 小さくてひょうきんな動物たちに対して、巨大な月の顔は、いたずら好きのやんちゃ坊主。
 ここまでおいでっていうふうに、思わせぶりな口元です。




 このお月さまは、まるで銀紙をくしゃくしゃにしたような顔をしています。
 わたしから見ると、おいしいとは思えない。(動物たちは違う意見のようですが……)
 でも、こんなに逃げ回られてしまったら、かえって燃えるのが人情ですよね。
 鬼ごっこをしているつもりなのか、月はなかなかつかまりません。
 絵本から目を上げて空を見て、わたしも少し考えます。



 お月さまは、食べられるのがいやなのかな?
 それとも、遊んで欲しいのかな?
 遊んで欲しいという可能性は大きいかも。
 だってお月さまは、暗い夜空にひとりぼっち。
 地上には、たくさんの動物たちが、自分を目指して塔のように積み重なっている。
 友だちがたくさんいるカメが、うらやましいのかもしれないな。
 ちょっとばかり、いじわるをしたいのかもしれないな。

 お月さまが最後にどうなったかは、絵本を見ていただきましょう。
 お月さまと動物たちのやりとりと、駆け引きをとおして、お月さまのこころを想像してみるのもまた、楽しいかもしれません。

 あすにゃん
  猫とお菓子と広島がすきです!
 漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。



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