『おつきさまこんばんは』 林 友子 さく 福音館書店
ひと昔前のお月さまの顔かな、というちょっと古めのインパクトがある金色のお月さまと、それにご挨拶する2匹のねこのしぐさが愛らしい絵本。ストーリーがあり、起承転結がしっかりあるので、創作初心者にも参考になる本かも。
第一ページを見ると、
「よるに なったよ
ほら おそらが くらい くらい」
という文とともに、紺色の夜空と黒い家(灯りの点いた窓が一個まんなかにあります)、その周りに2匹のねこが描かれた絵。
この猫は、多分くろねこでしょうね。しなやかな体つきや、柔らかい体毛などが連想させるタッチです。最初はこのねこたちだけしか見当たりません。2匹とも、こっちを見つめているような絵の描き方です。お月さまは、どこにあるのかな?
次のページを見ると、屋根の上が明るくなって、でっかい月の端っこが見えてきます。
いくら満月だとは言っても、ふつう、ここまで月は大きくならないと思うのです。
なにしろ、家を飲み込みそうなぐらいの月。
ねこがどういう風に、この月を見ているかを、この絵本で確認してみてください!
顔は描かれていないので想像します。
待ち構えているぞ、という顔なのかな?
それとも、ビックリしてるのかな?
とうとう月が出た! とうれしそうなのかもしれません。
こういうのを見ると、絵本といえども動きがあるから退屈しなくていいですね。
たまにハズレを引くと、つまんないどころか、絵も雑なのにぶち当たったりします。
その点、この絵本は良質だ。
月にくらべると、ねこはとても小さく描かれています。
でも、主人公の月と違って、動きがありますね。
総毛を逆立てたり、身体を丸めたり、刻々と変わっていく時間のなかで、ねこたちもお月さまと一生懸命遊んでます。
野良猫なのでしょうか?
飼い猫だけど、近所に放し飼いにしてる?
地域猫として、地域の人たちが共同で飼っているのかも?
人間は、一人も出てきませんが、顔のついたお月さまは出てきます。
おりしも満月、目も口元も金色でキラキラしてる。
そこへまっくろな雲が、月に覆いかぶさってきます。
そのときのお月さまの顔がまた、面白い。
いかにも「迷惑だわ~」っていう目つき、口元、眉毛のあたりもそんなかんじで。
童謡の、「月」を思い出してしまいました。
懐かしさと、どことなく新しさもあるこの「おつきさまこんばんわ」。
くもに覆われた月と、ねこのしぐさと、添えてある文の斬新さも、説得力もあって、面白い。
なんということもない日常にも、こんな新しさを発見できるというところに、絵本の魅力があるのかもしれません。
あすにゃん
猫とお菓子と広島がすきです!
漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。
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