Rei Harakami、4枚目のアルバム『lust』。リリースされたのは2005年。このアルバムでRei Harakamiの名前が広がった。ジャケットの写真、昭和の時代を感じさせる平屋の住宅が、素朴なエレクトロニカにとても似合っていた。5曲目に収録されている「owari no kisetsu」では彼がボーカルをとった。細野晴臣のカバーだ。1973年にリリースされた名盤『HOSONO HOUSE』の1曲だった。

Rei Harakamiといえば、よく話題にあがるのが機材だ。彼はローランド社の音源モジュール、SC-88Pro(たしかSC-88も)をつかっていた。この機材、完全にアマチュア向けで、SC-88はエントリー向けのDTMセット「ミュージ郎」なんかにも同梱されていた。

当時、SC-88とSC-88Proをもっていた。MacはOS9だった頃の話だ。PCのシーケンスソフトからMIDIを利用して外部音源を鳴らす仕組みだった。SC-88Proに付いていたインサーションエフェクトをかけてニヤニヤとしていた。PCのパワーは貧弱で、音声編集なんてアマチュアが触るのはお金がかかる時代だった。

まちがっても、Rei Harakamiのような音は出なかった。同じ音色なのかもしれないが、音と音のあいだにある無音がRei Harakamiのとはまるでちがっていた。いや、なにもかもがちがっていた。素人がつくる音の集合は、Rei Harakamiが紡ぎあげる音の織物と、まるでちがっていた。

Rei Harakamiの音楽はとても優しい。そして、どこやら刹那的だ。たぶん、ものすごく日本的で、聴いているとどこかで見たような郷愁が浮かび上がってくる。夏よりは秋だ。秋のなかでも、冬をまぢかに迎えた11月が似合う。だから、靴下をはいていないとフローリングの床が冷たく感じる季節になると、Rei Harakamiが聴きたくなる。

2011年7月、Rei Harakamiは40歳の若さでこの世を去った。あれから7年、日本はゆるゆると進んでいる。




http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/our-time-with-rei-harakami-nbsp


Rei Harakamiの作品をリイシューするレーベル「rings」の代表、原雅明が書いた記事。とても心のこもった文章だ。

lust ラスト (UHQ-CD仕様)
rei harakami レイ・ハラカミ
rings
2015-12-02



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