群馬県出身のベテランロックバンドにしてヴィジュアル系の先駆者ともいえるBUCK-TICK(以下B-T)について語るシリーズ11回め。今回からは21世紀の作品。


・戦争と平和をテーマとしたリリカルな作風『極東I LOVE YOU』

極東 I LOVE YOU(完全生産限定盤)
BUCK-TICK
アリオラジャパン
2017-12-29


21世紀に入ってから最初の作品ですが、この前年の2001年の9月11日、世界中を震撼させた出来事がありました。アメリカで複数の航空機がハイジャックされ、ニューヨークのワールドトレードセンターに激突し崩壊させ、多くの犠牲者を出した、いわゆる「アメリカ同時多発テロ事件」です。これをきっかけに、イラク戦争やアフガニスタン紛争などが勃発しました。

それに対し、坂本龍一さんなど多くのアーティストが平和に向けた運動をしたり(坂本さんはそれ以前から様々な活動をされていますが)、戦争反対をテーマに掲げた曲を発表したりしていました。B-Tも例外ではなく、このアルバムと次の『Mona Lisa OVERDRIVE』はそれらの思想が反映された作品となっています。

ただ、『極東I LOVE YOU』は櫻井さんの、『Mona Lisa OVERDRIVE』は今井さんのキャラクターが前面に出されていて、『極東~』は静的でリリカルな内容、『Mona Lisa~』は攻撃的でアッパーな内容。それぞれに対となる存在です。元々は2枚組にする案もあったそうですが曲数が足りず、後に新しい曲を作って『Mona Lisa~』をリリースした経緯があります。


で、静的でリリカルなのがこっちのアルバムなのですが・・・。個人的には苦手なんだよなあ・・・。戦場へと赴く兵士が母親にお別れの言葉を告げる『Long Distance Call』とか、良い歌詞だとは思うけどどうも実感できない。平和ボケしているからだろうか。

先行シングルの『21st Cherry Boy』は、T-REXの『20th Century Boy』をパロった歌詞が面白いですが、シリアスなこの作品の中ではなんとなく浮いていてどうにも。前作『ONE LIFE,ONE DEATH』に入っていた方が合っていたんじゃないかな。

1曲めの『疾風のブレードランナー』は、前作の「ケータイ」なんて比較にならんくらいに衝撃的にポジティブな歌詞。「共に青い春を駆け抜けよう」て。「心を奪う感覚-SENSATION-」とか、今井さんっぽい楽しいセンテンスもあるけど。『ジョジョの奇妙な冒険』のセリフに確実に影響を受けてるでしょ・・・この後のアルバムに『Jonathan Jet-Coaster』という曲があるのですが、そっちはもろにジョジョ。


ただ、それ以外の曲はどうにも今のところ、入ってこない・・・。'90年代のオリジナルアルバムは『SEXY STREAM LINER』以外は全部が普通に好きなのですが、00年代以降は作品によって自分に合う合わないがかなりきっぱりと分かれます。こっちは合わない。


・挑発的サイバーパンク『Mona Lisa OVERDRIVE』

Mona Lisa OVERDRIVE(完全生産限定盤)
BUCK-TICK
アリオラジャパン
2017-12-29


先述のとおり、『極東I LOVE YOU』と対となる作品。櫻井さんの感受性が反映された前作に対し、今回は今井さんの攻撃性が前面に現れたサイバーパンク的な作風。個人的には断然こっちの方が好き。

「I HATE YOU SO FUCK IT」という中学生のラクガキみたいな英詞がたまらない挑発的なナンバー『ナカユビ』や、久しぶりにオリコントップ10入りしたパンクチューン『残骸』、それまでのおふざけ変態ラップではなくわりとまともにラップしている『Mona Lisa』、今井さんがおそらく10年以上ぶりに描いたラブソング『GIRL』など、中盤までのテンションは最高。


朝日は照らし 花は咲き愛もある 
あの吸い込まれそうな空は青 風はまだ吹いている



こんなきれいな歌詞も書くのに、櫻井さんからマイクを奪って独壇場と化している『Sid Vicious ON THE BEACH』はメチャクチャ。「混乱こそわが墓標と呟いた」(クリムゾン・キング『Epitaph』の歌詞「混沌こそ我が墓碑銘」のパロディー)、「吐き気がするほどロマンティックだぜby遠藤ミチロウ」(遠藤氏を中心としたパンクバンド、ザ・スターリン『ロマンチスト』の歌詞からの引用)と、ロック界の先輩がたへのリスペクトも忍ばせながら、「風にそよいでいるアンダーヘアー」なんていう間抜けなことも朗々と歌っていらっしゃる、やりたい放題感が強い1曲。

なぜシド・ヴィシャスがビーチにいるのかはわからないけど、そこらへんは考えなくて良いのでしょう。櫻井さんがコーラスで登場してくる「Fuckin' class hero ON THE BEACH」の1行は、たぶんジョン・レノンの『Working Class Hero』のパロディー。


前半が熱すぎて後半がダレ気味に思わなくもないのですが、それでもやっぱりこっちの方が好き。

逆に、『極東I LOVE YOU』が気に入った人は、櫻井さんのソロアルバム『愛の惑星』がおすすめです。なぜか「左手の写真」がおまけについてきました・・・。

愛の惑星
櫻井敦司
ビクターエンタテインメント
2004-06-23



・やかましくて楽しい、たぶん次世代的ライブアルバム『at the night side』

at the night side(完全生産限定盤)
BUCK-TICK
アリオラジャパン
2017-12-29


『Mona Lisa OVERDRIVE』ツアーの公演を中心に選曲されたライブアルバム。ゆったりした曲が多かった『SEXY STRANGE LIVE DISC』とは違い、ほとんどが攻撃的なチューンで構成されています。定番曲の『キラメキの中で・・・』もやかましくなっており、多くは小規模なライブハウスでの公演なので歓声もよく聴こえます。唐突に『メリーさんの羊』を弾き出す『細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM』が楽しい。

この後は、B-T史上はじめて、バンド活動を丸々1年間お休みすることになります。


・歴代順に他のアルバムについても書いていますので、よろしかったら過去記事もお願いいたします!

・酒とキラキラとビートロック-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.1-

・アイドル?からだんだん闇へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.2-

・闇の中で悲しみを・・・-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.3-

・闇よりも深い自滅へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.4-

・本格的な不安定へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.5-


・カオスの絶頂期-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.6-


・酒と被害妄想に溺れて-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.7-

・別のベクトルで壊れた?-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.8-


・電脳世界(?)へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.9-

・大人の事情も超えて生きていく-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.10-

この記事を書いた人


henkou_ver

プラーナ

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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