『いない いない ばあ』 松谷みよ子 文 瀬川康夫 絵 童心社
「いない いない」と言いながらページをめくると、ねこちゃんが「ばあ」。
なんということもない、赤ちゃん向けの絵本です。
作者は、「龍(たつ)の子太郎」で有名な、松谷みよ子さん。
絵本の中に登場するのは、ねこちゃんやくまちゃん、なぜかネズミちゃんやキツネちゃん。
最後のページには、赤ちゃんの絵が描いてあります。ここは自分の赤ちゃんの名前で呼びたいところ。
登場するねこやくまやキツネやネズミは、どれも個性が豊かです。
そのままぬいぐるみにしてもいいかもしれない。
次々と、この登場人物たちが、いないいないばあと声を発します。
赤ちゃんが笑い声を上げるのが、聞こえてきそうです。
松谷みよ子さんの、語りかけるような口ぶりが、絵本の文に反映されています。
この文章を書くまでに、どれくらいかかったのかな。
赤ちゃんに理解できるレベルまでしなくちゃね。悩んだでしょうね。
だって、ねこを表現するのに、
「にゃあにゃ」だもんなー。この言葉の感覚、するどすぎる(笑)
そしてこの、にゃあにゃが顔を隠している絵も、なかなか愛らしくてすてきです。
次のページにすぐ、にゃあにゃが顔を出して、
「ばあ」
と言ってる絵も、「どーだ、おどろいたかあー」と得意そうなにゃあにゃが、愛嬌たっぷりなのですよ。
ロングセラーの理由が、よくわかります。
松谷みよ子は、児童書をよく書いた人だという記憶がありますが、昔話にも造詣が深いということで、キツネを表現するときも、この絵本では、「こんこんきつね」です。
きつねがこんこん鳴くという、昔話のお約束を守っているのです。
そういう目でみてみると、この絵本には、現代ではやっかいものであるネズミだのクマだのが、赤ちゃんといっしょに遊ぶ、という、自然回帰みたいなところも若干、見受けられます。
ひとを化かすキツネでさえ、赤ちゃんのために遊んでくれる。
都会的になってきた昨今の日本では、少々、理想的かつユートピア的な世界が広がっている気がします。
ただ単純に「いないいないばあ」と赤ちゃんを楽しませる絵本なので、そこまで考えなくていいのかもしれませんが、なにせ幼児教育というのは重要ですから。しつけとか、思想の背景を伝えるという意味では、絵本の選定は慎重でなければならないかもしれませんよね。
単に子どもが喜ぶだけでなく、古来からある日本のよいところを伝えていこう、というロングセラーの絵本なのだろう、と考えてしまうわたしだったりします。
あすにゃん
猫とお菓子と広島がすきです!
漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。
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