群馬県出身のベテランロックバンドで、ヴィジュアル系の先駆者でもあるBUCK-TICKについて語るシリーズ9回め。9回めにして、デビュー10年めのアルバム紹介ですよ。確実に今年じゅうには終わりませんな。全アルバムだからね。書いているうちに次作が出るんじゃないのか?というのも気にせず、今週も好き勝手に行きましょう。


・無気力電子系・・・合う人には最高らしい『SEXY STREAM LINER』

SEXY STREAM LINER
BUCK-TICK
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1997-12-10


メジャーデビュー以来はじめて、レコード会社を移籍。移籍後の第1弾・・・というか、そのレコード会社での唯一のオリジナルアルバム。ネットで見た噂レベルだけど、この会社とはどうも上手く行かなかったようです。

ドラムンベースを主体とした意欲作で、本格的にテクノに挑戦した作品。・・・なのですが、『シェイプレス』同様、凄いのかもしれないけど、どうにも音楽的偏差値が低いのか、自分には理解できず、いったんレンタルしたにもかかわらずダビングなどはせずに返却した覚えがあります。

そう。実はこれ、持っていません。後に書く『97BT99』という、このレコード会社の時代の音源を全部つっこんだアルバムで初めてちゃんと聴きました。が、後半の数曲は好きなものの、中盤がどうしても馴染めず。歴代のB-Tのアルバムの中で(『シェイプレス』は企画ものなので除外)、実は最も苦手。


先行シングルの『ヒロイン』はすごくキャッチーで、これだけは最初からノレたのですが、アルバムバージョンはノイズがガンガンにかかり、さらにサブタイトルが「-angel dust mix-」・・・。エンジェルダスト・・・。『キャンディ』と似た作風ですが、今回はテレビでも歌わせてもらえるように歌詞も抑えめにしたとのこと(『キャンディ』の歌詞は一部、誤解を招くような表現があった)。まあ・・・冒頭から「お・ま・え・と・ひ・と・つ・だ」なんだけど・・・。


そして、櫻井さんは再び病んでしまっています。このアルバムの前年、個人で海外での撮影があったのだそうですが、現地で腹膜炎を発症し、生死の境を彷徨ったとのことです。「死ぬなら産まれた地で死にたい」と、半ば無理やり日本に帰国して一命を取り留めましたが、本当に九死に一生という状態だったそうで、しばらく通院が続きました。

後半の曲『Schiz・o幻想』は、当時の精神状態をモロに書いたものなのだそうですが、確かに通院するべきだなあ・・・これは。Schiz・oとはスキゾフレニア(統合失調症)の略です。今は寛解していると思うけど、『Six/Nine』前後からこの時期は本当に酷かったんだろうな・・・。


ダークというよりも無気力や無機質といった方が近い作風が苦手なのかなあ。あくまで個人の感想。逆に、このアルバムをB-T最高傑作に挙げる人もいます。

そんな中で、櫻井さんと今井さんの掛け合いラップが楽しい『MY FUCKIN' VALENTINE』が楽しい。「汚物にまみれ スカトロの空」とか「マゾヒスト ハートブレーカー 女王様たち そそる未来」とか、最初は意味わかんなかったけど、今は汚れた大人なので全部わかってしまいます。


・激レアな2枚組LP『LTD』

この作品は、全く存在を知りませんでした。このシリーズを書くにあたって色々と関連サイトなどをググっている時に初めて知りました。予約限定商品の2枚組EP盤。Amazonにも楽天にも在庫がないようですね。画像検索してもジャケットの写真すら出てこないな・・・。

『SEXY STREAM LINER』からのリカットシングルCD『囁き』と同時発売で、収録曲もほぼ同じ。ただ、こちらにはアルバム曲2曲が追加されています。レイモンド・ワッツ氏、ギュンター・シュルツ氏、ダニエル・アッシュ氏といった海外の大御所3名によるリミックスは、好きな人にはたまらないのでしょうが、以前も書いたように自分はリミックスというものがどうにも苦手でして・・・。



・打ち込みとライブ感の融合『SWEET STRANGE LIVE DISC』

Sweet Strange Live Disk
BUCK-TICK
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1998-08-12


『SEXY STREAM LINER』のアルバムツアーの模様を収めた初のライブアルバム。映像版の『SEXY STRANGE LIVE FILM』と同時発売ですが、収録曲が微妙に違います。

ただでさえ同期モノの打ち込みが多いアルバムをライブでどこまで再現できるのか?という挑戦作ですが、意外なくらいライブ感に満ち溢れています。ていうか元のアルバムは苦手なのに、こっちは普通に好きなんだよな。

過去曲の『キラメキの中で・・・』が、新曲ばかりのセットリストの中で当たり前のように溶け込んでいる・・・というか、主役級に目立っています。

1998年5月8日と9日の公演から収録されていますが、この1週間ほど前に、長く交流のあった元X JAPANのhideさんが急逝されています。最終公演では機材トラブルが続発し、急遽、櫻井さんがアカペラで『COSMOS』を歌い出し、大合唱になったという伝説があります。メンバーの誰かは「hideが天国からイタズラしてる」と言ったそうです。

原曲の音源がそもそもうるさい『キャンディ』はさらにうるさくなっていて、いい感じにブッ飛べます。

・配信サービスにはないよ。

これはまあ余談なのですが、『SEXY STREAM LINER』から、2014年の『或いはアナーキー』までの10枚のアルバムは、定額制の配信音楽サービスの対象からごっそり抜けています。同じアーティストでも、すべての音源が配信されているわけではなかったりするのですね。大人の事情ですね。そして、この時期よりも後の曲はYouTubeにも公式動画が全然なかったりするんだよなあ。



・歴代順に他のアルバムについても書いていますので、よろしかったら過去記事もお願いいたします!


・酒とキラキラとビートロック-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.1-

・アイドル?からだんだん闇へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.2-

・闇の中で悲しみを・・・-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.3-

・闇よりも深い自滅へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.4-

・本格的な不安定へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.5-

・カオスの絶頂期-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.6-

・酒と被害妄想に溺れて-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.7-

・別のベクトルで壊れた?-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.8-



この記事を書いた人


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プラーナ

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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