ぷらすです。

近年はあまり邦画を観ない僕ですが、一時期ハリウッド映画に嫌気がさし、邦画やミニシアター系の映画ばかり観ていた時期がありました。
今回ご紹介する石井聰互(現、石井岳龍?)監督の『逆噴射家族』は、そうした作品群の中で僕が最も痺れた作品で、当時はビデオを何度も繰り返し観た作品でした。
というわけで、今回は『逆噴射家族』について解説していきますよー!




小林よしのりx石井聰互x長谷川和彦


本作の原案・脚本は漫画家の小林よしのり。
当時はまだ「ゴーマニズム宣言」よりずっと前。少年ジャンプ連載の「東大一直線」の作者として名前を知られているギャグ漫画家でした。

監督の石井聰互は福岡県福岡市出身。
日大芸術学部入学直後、学生による自主映画グループ「狂映舎」を設立して製作した8mm映画デビュー作「高校大パニック」が注目され、日活版リメイクの「高校大パニック」(1978)では共同監督を務めます。
同年「突撃!!博多愚連隊」がぴあフィルムフェスティバルに入選。
1980年には伝説のインディー映画「狂い咲きサンダーロード」、1982年には「爆裂都市 BURST CITY」を発表しました。
その後は、「五条霊戦記 GOJOE」「パンク侍、斬られて候」など数々の作品を発表。
1980年代を代表する監督の一人として知られています。

そんな二人を結びつけたのは「太陽を盗んだ男」の監督で、石井も参加していたディレクターズ・カンパニーの主催 長谷川和彦。
その三人にATG代表・佐々木史朗を交えた4人の話し合いが行われディレクターズ・カンパニー製作の作品としては、同年4月に公開された池田敏春監督「人魚伝説」(1984)に続く本格的劇映画第二弾として本作の企画はスタートするのです。

時代背景


本作のタイトル「逆噴射~」は公開2年前に起きた「日本航空羽田沖墜落事故」が元ネタになっています。
統合失調症の機長によるジェット機の逆噴射が事故の原因ということで、一時「逆噴射」や「機長やめてください!」という言葉が当時の流行語になった事を受けてのタイトルで、ストーリーにも深く関わっています。
また、当時の日本はバブル真っ只中で、人々の暮らしは豊かになる一方、核家族問題や家庭内・校内暴力などの問題が顕著になっていった時代でもあるんですね。
本作はそうした時代の空気を一家のホームドラマの中に入れ込んだ、サバイバルアクションムービーなのです。

キャスト


この作品のメインキャストはわずか5人。
主人公の小林勝国役「ベストヒットUSA 」のDJや「スネークマンショー」で知られる小林克也
勝国の妻 冴子役に倍賞美津子
東大を目指し浪人中の長男 正樹役に有薗芳記
アイドルか女子プロレスラーのどちらかを目指す13歳の長女 エリカ役に工藤夕貴
福岡からやってきた勝国の父親 寿国役にクレイジーキャッツの植木等
と、今となっては驚きの豪華キャスティング。

本作ではそんな5人が新居となる一軒家を舞台に、次第に対立し狂っていく様子をブラックユーモアたっぷりに、かつ、スラップスティックなハードコアアクション映画として描いていくんですねー。

ざっくりストーリー紹介


小林家の4人は、都会の団地住まいから郊外の一戸建ての新居に引っ越せたことを喜びます。
勝国は、家族のが現代病が一戸建てに引っ越すことで治る事を期待し、また家族も最初のうちは勝国の期待通りに「理想の家族」として出発するものの、ある日、勝国の父親で福岡からやってきた破天荒な寿国が同居を始めたことで家族の歯車が狂い始めます。

同居を嫌がる家族と父親との板挟みになった勝国は、地下に父親の部屋を作るためにリビングの床を剥がして地面を掘り始め、更に作業効率を高めるためにエンジン付きの穴掘り機やベルトコンベアまで購入する始末。しかも地面を掘り返して発見したシロアリの巣を駆除するためガソリンを撒いて火をつけたりと大暴走。

穴掘りのため3日間(無断で)休んだ後、冴子に頼まれて会社に出勤する勝国だったが、前日に床下から出たシロアリが気になり再び無断早退して駆除剤を購入して帰宅すると作業を再開。
しかし、穴掘り機で水道管を破裂させてしまった事で家族の不満は限界に達し、罵倒が飛び交う大混乱に。

そんな家族の様子に絶望した勝国は、購入したシロアリ駆除剤入のコーヒーで一家心中を図るが、これに家族の狂気が爆発。
マイホームを舞台に、小林一家の血で血を洗うバトルが勃発する。
という物語です。

これは、誰もが自分の中に狂気を隠していて、なにかのキッカケで常識や普通という薄皮を一枚めくればたちまち狂気が噴き出してくるという、日本人の国民性…ひいては人間やコミュニティーそのものを、「小林家」という最小のコミュニティーを通してデフォルメしながら寓話的に描いているのです。

それでもまだ、この当時はある種の皮肉の効いたパロディーとして成立していた本作でしたが、今観返してみると「あれ?」っと。
公開から34年経った今、現実がこの映画に追いついてきてるんじゃね? と思ったりしますねー。

シロアリとは


そんな本作で象徴的に登場するシロアリ。
これは言うまでもなく家(ハウス)を食い荒らし崩壊させる恐怖の象徴です。
しかし勝国はシロアリによって家(ホーム)が崩壊してしまうと思い込み、シロアリを徹底的に駆除しようとするのです。
この時のシロアリが、理想の家庭に入り込んで家庭(ホーム)を壊す父親であり、自分勝手な言動をする家族のメタファーなのは言うまでもありません。

そんな勝国の行動が引き金となって、家族(ファミリー)が一度は崩壊してしまうんですが、最終的に家(ハウス)はただの入れ物でしかなく、ファミリーが集まる場所が家(ホーム)だということに勝国は気づき、そしてラストシーンの大団円へと繋がっていくわけです。

つまり、本作は家族の崩壊と再生を描いたホームドラマであり、(かなりエキセントリックな映画ではあるけど)石井監督は恐らく小津安二郎の時代から続くホームドラマの歴史を自分なりに解釈、再構成して本作を作り上げたのではないかと思います。

もちろん当時の僕はそんな事は考えもせずに、メジャー会社制作の退屈な邦画とは違う、スタイリッシュで(今だったらコンプラ的に絶対引っかかる)パンキッシュな本作のカッコよさにただただ痺れてたんですけどねーw

というわけで、今回は石井聰互監督の『逆噴射家族』をご紹介しました。
レンタル店やネット配信でも観られると思うので、機会があれば是非ご覧下さい!!


この記事を書いた人 青空ぷらす

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