BUCK-TICK(以下、B-Tと表記)について語る3回め。今回は、B-Tの長い歴史の上で絶対に外せない2作について。


・容赦ない作風になった最大のヒット作『悪の華』
 
惡の華 (2015年ミックス版)<プラチナSHM>
BUCK-TICK
ビクターエンタテインメント
2015-02-01





前作『TABOO』がヒットした1989年に、ギターの今井さんが麻薬取締法違反で逮捕されるという不祥事が発生し、バンドは謹慎を余儀なくされることになります。その謹慎明けの1発めがこの『悪の華』ですが、結果的に最大のヒットアルバムとなりました。

モノクロの妖しげなジャケットは、明らかにそれまでの可愛らしい感じとは異質なもの。たぶん子供の頃にこの写真を見たら怖がっていたと思う。よく見ると背景の置物とかチープだったりして、ちょっとオモチャっぽいんですけどね。

ボードレールの詩集からタイトルを拝借し、文学的な匂いが漂った世界観の歌詞に切り替わります。前作まではロマンチックなテイストでしたが、ここからは容赦なく難解に。


ナチスの青少年団体の歴史を題材とした、重く狂気的な『NATIONAL MEDIA BOYS』から始まる不穏な空気。「超人は千年まで夢を見る」とはアドルフ・ヒトラーのことですが、そのアドルフ氏が国民車として構想して造らせたフォルクスワーゲン・ビートルが来年で生産終了することが先日わかりました。夢は100年も持たなかったんだな。


もう1人のギターの星野さんが単独で歌詞を書いた(おそらく)唯一の曲『PLEASURE LAND』は、浮遊感があり、この曲だけ歌い方が明らかに違います。そのせいで星野さんが歌っているという噂もあったらしい・・・。実際には歌っているのはいつも通りの櫻井さんですが、麻薬のトリップ状態を全員で想定して作詞作曲して歌ったのだろうか・・・。ちなみに、ライブでほとんど演奏されたことのない幻の曲なのだそうです。


そして、タイトル曲の『悪の華』は、ギラギラしたダーティーなハードロック。冒頭の「うぅっ・・・!ああぁ・・・!うぅああっ!・・・っあああっ!」という喘ぎシャウトから飛べる。

でもこれ、浮き世離れした存在の櫻井さんがやるからカッコ付くのであって、素人がやるとギャグにしかならない・・・。それを面白がった大槻ケンヂさんが『悪の草』という替え歌(というか歌詞をまともに覚えていないだけ)を披露したこともあります。いちおう櫻井さんの承諾済み。


前作までとは明らかに鋭さと悪さが違う(まあ逮捕者いるし)ガチに容赦ないダークな出来栄え。


ただ、オリジナル盤は妙に音が籠っているのが難点です。それが良いという方もいらっしゃいますが、自分は2015年に出たプラチナSHM盤の方が、はっきりと音が聴こえるので好みです。

ボードレールの『悪の華』は、大学生の頃に読んだのですが・・・。意味がよくわかりませんでした。でも、割りと近年の作品でも、『ボードレールで眠れない』というタイトルや、「反逆」「死」といった共通のテーマを含んでいる歌詞が現れるので、なんとか紐解きたいけど・・・。ヴィジュアル系って学問であり勉強なんですよ。


・B-Tの雛型であり不朽の名盤『狂った太陽』

狂った太陽 (デジタル・リマスター盤)
BUCK-TICK
ビクターエンタテインメント
2002-09-19


よりダークで内省的になり、アイドル?要素はごっそりと消えた、転機的な作品。ここでひとつのB-Tの雛型が産まれた感じで、2000年代までは基本的にこの路線が続きます。

先行シングルの『スピード』は・・・、ご察しの通り・・・、ええ、アレの隠語です。ええ、さっき申しました通り、今井さんは1989年に麻薬取締法違反で・・・。「イカレタノハオレダケ キミハスコシマトモダ」と陽気に歌われています。そして次のシングルが『M・A・D』です。・・・反省しとらんやろ。もっと後だと「-angel dust mix-」とか出てきたりする・・・。


ラジカセのCMに使われた(今回は櫻井さんの単独出演)『JUPITER』は、星野さんの初のシングル曲にして、初のバラードシングル。これ以降は、後に多くの名曲を作り、B-Tの名バラード作者としてファンに親しまれるのですが、その中でも群を抜いて美しい名曲。

このアルバムの直前に、櫻井さんの母親が逝去され、非常にショックを受けたそうで、その悲しみが歌詞に深く反映されています。「母との別れ」をテーマにした歌詞は、この後にもアプローチを変えて何度も表れることに。


どれほど悔やみ続けたら
一度は優しくなれるかな?



そこから続く『さくら』は、タイトルこそ季語ですが、歌詞には春を思わせるような単語はいっさい出てきません。このタイトルでいきなり「クスリ」なんて出てくる曲、まずありえません。「クスリは悲しいだけ」と。いちおう反省しているみたいです。良かった。


『JUPITER』は綺麗な言葉遣いでお母様への別れを歌っていますが、ラストの『太陽二殺サレタ』は泥くさく悲しみを歌っています。というのも、櫻井さんがお母様の訃報を聞いたのは、朝までお酒を呑み明かしていた時だったからだそうです。だから、「太陽二殺サレタ・・・ サヨナラヲ言ウ前二・・・」。元々は、この曲のタイトルをアルバムタイトルにするつもりだったそうです。


櫻井さんのお母様については、著書『LOVE ME』で、少しだけ語られています。


BUCK-TICK/LOVE ME
YASUE MATSUURA
シンコーミュージック
1998-12-10



非常に我慢強い母で、アルコール中毒ぎみのお父様の面倒をずっと見ていたそうです。そのアルコール中毒ぎみのお父様は、櫻井さんが18歳の頃に逝去されたとのこと。若くして両親を亡くしたことの辛さと、お父様の酒癖の悪さを知りつつ、お酒を呑んでいる間に母の死に目に会えなかったことは、その後しばらくトラウマになったそうで、この後の数作のアルバムでは、自虐的だったり自暴自棄な歌詞が目立つようになります。


そんな事情を含む作品ですが、初期の名盤として名高い傑作で、ファンからの人気も物凄く高いです。実際に、27年前のアルバムですが、全く古く感じません。


世間のバンドブームも終わり、この後のB-Tはますます内に籠った暗い作風へとシフトしていきます。






・酒とキラキラとビートロック-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.1-


・アイドル?からだんだん闇へ-BUCK-TICK全アルバム紹介Vol.2-




この記事を書いた人


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プラーナ

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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