今回は元気を出したい気分なので映画『アイデン&ティティ』について。2003年12月に公開された映画なのでずいぶん前の映画になってしまったが、この映画は一部の人達にとってはずっと色褪せることがない魅力がつまっていると信じている、いや信じたい。

『アイデン&ティティ』とは?

『アイデン&ティティ』は1980年代末、バンドブームの終焉前後が舞台だ。実際にあのブームの最中にバンドをしていて、当時はとても珍しかった金髪の髪をなびかせて大学へ通っていた私には、あの空気は懐かしくもあり少し面映ゆくもある。今だったらダサいと笑われることをカッコいいと本気で信じていた時代だ。

物語はそのバンドブームに乗ってメジャーデビューしたバンドのギタリスト、中島が「売れる音楽」と「自分たちのやりたい音楽」の間で悩む姿を描いている。ある夜、中島の部屋にボブ・ディランによく似たロックの神様が現れ、それからたびたび彼の目の前に現れる神様を見ているうちに中島は本当にやりたい音楽ができていない自分を恥じるようになる。

中島は苦悩しながら迷走するものの散々に悩んだ挙句、中島は「やりたい音楽をやる」という選択をし新曲を作る。バンドのメンバーもその曲に感動し、彼らは「売れる音楽」より「やりたい音楽」を選んで進んでいく、というのが大雑把なストーリー。至ってシンプルなストーリーなのだ。

個性的なメンツ揃い!

原作はみうらじゅんの『アイデン&ティティ』。彼は無類のボブ・ディラン好きとしても知られている。劇中でもボブ・ディランの曲が多く使用されているが、脚本を英訳したものをボブ・ディラン本人に送って交渉をして、使用許可を得たそうだ。その後、劇中で使わわれたボブ・ディランの曲だけを集めたコンビレーション・アルバムも発売されている。







アイデン&ティティ
ボブ・ディラン
Sony Music Direct
2004-06-02


監督は田口トモロヲ。彼の初監督作品である。どことなく初々しく感じるが、この映画にはよく合っていると思う。脚本は宮藤官九郎。説明の必要は無いだろう。あちこちに張られた伏線の回収や小ネタの挟み方がうまく、さすがクドカンだなと納得させられる。

主人公の中島は銀杏ボーイズ(といっても1人だが)の峯田和伸。最近は朝ドラでも存在感あふれる演技を見せて話題になった。まさか朝ドラに彼が出演する日が来るとは……。その他バンドメンバーも中村獅童、大森南朋。それから中島の彼女で女神的な役割をしていたのは麻生久美子。これだけでも相当に個性の強いメンツが揃っている。それから人間椅子などバンドブーム時に人気のあった色々なバンドメンバー、当時のみうらじゅんのバンド「大島渚」もちらっと出演している。バンドブームを知っている世代にとっては懐かしい顔ぶれだ。


青臭くて何が悪い!と叫ぼう

この映画はいわゆる感動巨編でもなく、ある一時代の、一部分の人たちの苦悩や葛藤を描いた青春映画だ。今やバンドをするのにももっとスマートなやり方をするだろうし、今時ボブ・ディランを聴き込んで悩むような人もいないだろう。ただ、ある種の人の心に訴えかける何かは確実にある映画だと思う。劇中に流れるボブ・ディランの曲と、主人公たちの無様すぎるくらい暑苦しい言動に胸が熱くなる人は、年齢に関わらず青臭い何かを抱えているのだろう。もしもそれを笑われたら胸を張って言ってやればいい。「青臭くて何が悪い!」と。

アイデン & ティティ [DVD]
峯田和伸
東北新社
2004-08-27





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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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