今回紹介するのは1968年に公開されたイギリス・フランス合作の映画『あの胸にもう一度』だ。ずいぶん古い映画だが、いわゆる「スウィンギング・ロンドン」の影響を受けたサイケデリックな色彩を感じることができる、今観返してみても十分にスタイリッシュな映画だと思う。
監督と原作について
監督・撮影は『ナイル殺人事件』など多くの映画で撮影監督として活躍したジャック・カーディフ。この映画のカメラワークやところどころで使われるサイケデリックな色彩は当時はかなり斬新だったはずだ。古臭く感じる人もいるだろうがそれはそれ。1968年当時のカルチャーだということを忘れずに観て欲しい。
原作もある。フランスの作家、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの『オートバイ』がそれだ。彼はエロティシズムの大家と呼ばれ、ポーリーヌ・レアージュの『O嬢の物語』の序文を執筆したり、三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』のフランス語翻訳も手掛けている。私は残念ながら原作を読んでいない。
ストーリーとキャストについて
ストーリーは至ってシンプルだ。真面目なだけが取り柄の婚約者との結婚に物足りなさを感じていた本屋で働くレベッカ。そこに大学教授のダニエルが現れ、その後関係を結ぶようになる。レベッカはダニエルとの関係があるまま結婚し、ダニエルは結婚祝いとしてハーレーを送る。バイクの魅力をレベッカに教えたのもダニエルだ。
ダニエルに会いたいレベッカは夫が寝ているベッドを抜け出し、ハーレーを走らせて彼が住むハイデルベルクへ向かう。ハーレーを走らせながらダニエルに関する回想と妄想を繰り返し、疲れ果てて一軒のバーへ立ち寄る。そこから先は観てのお楽しみだ。
レベッカを演じたのはマリアンヌ・フェイスフル。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーの恋人としてもよく知られており、ストーンズのナンバーである『As Tears bo by』で歌手としてデビューし、透き通った歌声とロリータ的なルックスで人気となった。後年はアルコールやドラッグでしゃがれた声になってしまったが現在も健在だ。
ダニエルを演じたのはアラン・ドロン。『太陽がいっぱい』『サムライ』『冒険者たち』など多くの映画に出演している説明の必要がない大スターだ。2017年に引退を表明したそうだが、こちらも健在である。
峰不二子のルーツはここにあった!
この映画の一番の見どころはレベッカを演ずるマリアンヌ・フェイスフルのカッコよさである。素肌にジャンプスーツを着てバイクに乗る姿は、のちにアニメ、ルパン三世の峰不二子のモデルになったほどだ。不二子ちゃんのナイスバディとジャンプスーツはこの映画がなければなかったかもしれない。いやいや、それだけではない。ダニエルのサディスティックかつ悪魔めいた魅力も悪くない。もちろん、「スウィンギング・ロンドン」の空気を感じることができるカメラワークも良い。ぜひ一度観て欲しいと思う。
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