『だるまちゃんとかみなりちゃん』  加古里子  福音館書店
  
   今年の5月に亡くなられた絵本作家、加古里子(かこさとし)さんの絵本です。
 最初は、ふつうっぽい出だしです。
 だるまちゃんが道を歩いていたら、雨が降ってきました。
 そしてその直後、かみなりちゃんが落ちてきたっていうんですね。
 アリガチです。それがどーした、という感じです。
 ところが、かみなりちゃんは、なにやらドーナツ型のものを持っていて、それが木に引っかかっているから、取って欲しいとだるまちゃんにお願いします。
 それが絵本に描いてあるんですが、こ、これって、浮き輪……だよ、ね?
  水色で、ちょっと角がついています。
 こんなの持って、かみなりちゃんはなにがしたいんだろうか。








 だるまちゃんは、根が優しいのか、いろいろ工夫してその浮き輪を取ろうとがんばります。
 ぴょんぴょん跳んでみます。
 届きませんね。
 持っていた傘を投げつけてみて、どうだ! と狙ってみる。
 ところが、傘は浮き輪にぶら下がって、ぜんぜん浮き輪は落ちてこない。
 だるまちゃんは、泣きそうになります。




 それからどうしたのかは秘密ですが、この話は、前半よりも後半のほうが俄然面白いです。
 かみなりだから、という理由なのかわかりませんが、SF的な発想が突拍子もない。
 これは常識では測れませんね、驚きです。
 コスモポリタンなかみなりちゃん。
 その故郷では、アンドロイドやロボットが出てきそうです。

 加古里子さん、有名人だったんですねえ。知らなかった。
 絵本の裏を見ると、
「サンケイ児童出版文化賞推薦図書」
 って書いてありました。
 推薦されなくても、この人の本は続けて読みたいなぁ。
 この発想力、学びたいですね!





 お話それ自体は、「浦島太郎」の構図を盗用しています。
 困っていたカメ(かみなりちゃん)を助けて、竜宮城(かみなりちゃんの実家)に行って、おみやげをもらって帰るっていうだけ。
 おみやげは玉手箱ではありませんし、白髪のおじーさんになったりしないところがオリジナリティがありますね。
 最後のページで、おみやげをだるまさん家族がわけあうシーンがあるんですが、そこでおじいさんのだるまちゃんが、折れたコウモリ傘にがっくりきているところなんかは、ユーモアがあります。



 それにしても、どうして主人公がだるまちゃん?
 だるまというと、どうしても 願い事がかなったときに 白い目に筆を入れて黒くしてあげるイメージがあります。
 絵本の絵じたいも、ちょっと昔の絵っていう感じで、懐かしさが漂っておりました。
 だるまには、「七転び八起き」という昔からの連想もありますし、いわゆるひとつの、「験担ぎ」なのかもしれないなと思う一方で、
「だるまちゃんがこのコスモポリタンな大都市に行くのって、合わない~!」
 わたしのなかの常識がじゃまをするのでした。
 もうちょっと、頭をやわらかくしたいですねえ。
 だるまに家族がいるというところとか、驚かされることばかりの絵本でした。
 このだるまちゃんシリーズ、もっといろいろ知りたくなりました。

 あすにゃん
  猫とお菓子と広島がすきです!
 漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。

 

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