『名犬ラッシー』 エリック・ナイト 偕成社文庫
 
名犬ラッシー (偕成社文庫)
エリク ナイト
偕成社
1993-01-01



  エリック・ナイトの、犬が大好きな児童書です。
 わたしは、子どもの頃に、アメリカテレビドラマで『名犬ラッシー』を
 見た記憶があります。
 あのドラマでは、男の子と一緒にコリー犬が、アメリカの大自然のなか、
 駆けめぐっておりました(記憶違いかも)。
 近所のひとがコリー犬を飼って、自慢そうにしているのがうらやましかった。
 でも、犬って毎日運動させなきゃなので、
 飽きっぽいわたしには 飼うのは無理だろうと 両親は飼ってくれませんでした。




 それはともかく。
 今回のストーリーは、イギリスはヨークシャーに住む一家が、家の事情で純血種雌犬のラッシーを貴族に売ってしまい、貴族はこの犬をコンテストに出すために自分の領地のスコットランドに連れて行くものの、ラッシーはその手を逃れ、何百キロもある自宅へ無事にたどり着く、という単純明快なストーリーです。

 ラッシーと飼い主のジョーとのこころの交流はすばらしい。
 こんなに大切にされているからこそ、待遇がよくても貴族の家から逃げちゃうんですね。
 そんなヨークシャーのひとびとの、頑固だけど優しいところ。 
 「正直である」ことにこだわるジョーの父親。
   不機嫌な貴族の性格も、その孫娘の性格も、典型的だけど、だからこそわかりやすい。







 ラッシーがスコットランドに行ってしまって、隙を見て帰ることになるんですが、
 そこからの苦労は、並大抵じゃありません。
 石を投げつけられたり、裁判所で捕まえられそうになったり、その程度ならいいんですが、
 森でけがをしてその傷が膿(う)んで倒れそうになったときには、
 ドキドキして、読むのが苦痛になるほどです。

 それだけど、作者の視線は、どこまでも客観的です。
 ラッシーがどう考えたか、とか、想像したか、とか、勝手に書いてない。
 まるでドキュメンタリーの番組のアナウンサーのように、淡々と、
 ラッシーの話をし続けます。

 
  人間からひどい目に遭っているため、どんなに苦労しても、人間にはたよるまい、
 とするラッシーはいじらしい。
 それに対して、ラッシーを狂犬病だと誤解するひとびとが出てきたり、
 演劇に参加させようとする人間が出てきたり、
 銃で殺そうとする人間が出てきたりします。

 そんな彼女も、とうとう力尽きて、疲れ果てて倒れてしまう……。
 さあ、彼女はどうなるでしょう。



 どんなにひとりでがんばっても、助けてくれる人がいないと、
 目的は達成されない。
 温かいひとびとの支えと、運と努力。
 ひとを打つ一途な思い。
 さまざまなメッセージを読むことができる『名犬ラッシー』。
 ラストの思いがけないどんでん返しには、感動すること、間違いありません。

 あすにゃん
  猫とお菓子と広島がすきです!
 漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。



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