マーク・トウェインといえば、「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィン」で、有名なアメリカの小説家だ。マンガ家、山下和美の出世作といえば、「天才柳沢教授の生活」シリーズ。ふたりに共通するのは「不思議な少年」というタイトルの作品を書いた(もしくは書いている最中)ってことだ。

マーク・トウェインの「不思議な少年」

マーク・トウェインが晩年に記した「不思議な少年」は一言で、暗い。とても暗い。「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィンの冒険」で、わくわくした気持ちにさせた小説家と同じ人とは思えない。アドレナリン全開みたいな冒険とはまるで逆だ。とても、陰鬱な気分になる。

登場する少年は自らをサタンと呼んでいる。少年は人間たちは嘲り笑っている。ただ、小説としての完成度してはとても高いものだ。もしかすると、マーク・トウェインは「不思議な少年」を書くことによって、自分自身のバランスを保っていたのかもしれない。

不思議な少年 (岩波文庫)
マーク トウェイン
岩波書店
1999-12-16


この「不思議な少年」。マーク・トウェインの死後に編集者あたりが勝手に貼ったりくっつけたりした贋作と言われている。出来はものすごくいいんだけどね。ホンモノの「不思議な少年」はこちら。「不思議な少年第44号」。荒削りな感じの残った未完成稿だ。もし、こちらの稿が完成していたら、マーク・トウェインの評価も、かなり違っていたんだろうなと思う。


山下和美の「不思議な少年」

山下和美にとっての「不思議な少年」は、手塚治虫の「火の鳥」と同じようなものに見える。いわゆる、ライフワークだ。誤解を承知で言い切ってしまえば、マンガ家、山下和美は手塚治虫の正統的後継者のひとりだ。登場する少年は、1話1話の長さや、姿形は異なれど、火の鳥と似たような役割を果たしている。

現在、「不思議な少年」は休載状態だ。「ランド」を連載するためなんだろうけど、遅くなっても構わないので、決してクオリティを落とさぬように末永く発表していって欲しいと思っている。


※記念すべき第1巻


※文庫本も発売されている




動画は2016年に公開された映画「ルイの9番目の人生」。映画は、まだ観てない。原作となった翻訳本は読んだ。タイトルが少し違っている。「ルイの九番目の命」。Lifeを人生と訳すか、それとも命とするか、だね。内容からして、どちらも間違ってはいないけれど、どちらが正解というわけでもない。おそらく、ゲーム的な意味合いも含めて、ライフのままでいいんじゃないかと思う。


ルイの九番目の命 (ソフトバンク文庫)
リズ・ジェンセン
ソフトバンククリエイティブ
2006-12-15



不思議な少年というモチーフは古今東西、つかわれてきた。大人にとって、かつては自分もそうであったのにもかかわらず、子どもの純真さに恐れている部分がある。その純真さが、ときに、大人の立ち位置から覗えば、ひどく残酷なものに見えてしまうのかもしれない。

とりあえず、今度、「ルイの9番目の人生」を観てみよ。

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