『ゆきしろとばらあか』  グリム童話 岩崎書店



   グリム童話です。
 森の中に住んでいるお母さんと美しい姉妹。姉妹は生活を楽しんでいます。
 そこへ、恐ろしいくまがやってきます。

 くまというと、怖いのが常識ですが、最近の道徳の教科書には、弱いウサギをいじめる
 わるいオオカミに説教する役回りをしておりました。
 都市にすむ子どもたちが、誤解しなきゃいいけど。
 なにしろ、野生のくまは一撃でひとをぶっ殺しますからね!





 なので当然、美しい姉妹のゆきしろばらあかは、くまをこわがります。
 それにしても、いちいち家をノックするところがファンタジーです。
 この礼儀正しいくまが、敵意を持たないと知って、
 ゆきしろばらあかは、すっかりくまと仲良くなります。

 これだけでもじゅうぶん面白いんですが、ここでこびとが出てきます。
 このこびと、礼儀正しいくまとは正反対。
 なにかっつーと文句をつけ、悪態をつき、意地悪なことをいいます。
 こんなの助ける必要があるのかね。
 わたしだったら放り出すけど。


  

 こびとの絵が、生き生きしています。
 どちらかというと「善良」なタイプのゆきしろばらあかは、描きにくいかもしれません。
 悪というのは、パターンをはみ出していて、「逸脱のたのしみ」というのがあるんですね。
 こびとの悪を、楽しんでください。

 そんなに大切なものを、なんで気軽に苦難に陥れるのか、というこびとのドジっぷりも興味の対象ですが、くまとの意外な関わり合いもあとになってわかって、ゆきしろばらあかのハッピーエンドが、「どんな相手でも親切にするんですよ」というメッセージをかんじるお話です。
 




 外国の昔話なので、全体的に異国情緒たっぷりです。
 悪を悪と言い切って、すっぱり片をつけるところが、西洋っぽい。
 日本昔話だったら、ここまではしないだろうな。
 しかし、西洋も日本も、「わるいこと」というのはあるようです。
 意地悪なこと、ひとを傷つけること、ぬすむこと。
 だめなことをして、失敗するひとを描き出すところでは、共通しています。
 たとえば「おむすびころりん」だったら、どうだろうか。
 「はなさかじいさん」だったら?
 こびとを隣のじいさんだと置き換えてみると、その相違点とか類似点とかに気づくかも。







 この話は、女の子が主人公です。
 なので、昔話によくある、「結婚」がハッピーエンドです。
 気になるのは、ゆきしろばらあかがほとんど苦労していない、という点かもしれません。
 ほとんど運だけで人生を切り開いている。
 努力だけでは人生、やっていけないのかもね。
 結婚相手がゆきしろばらあかでなければならない理由がみあたりませんが、この無個性ぶりが読者を引きつけるのでしょう。


 あすにゃん
  猫とお菓子と広島がすきです!
 漫画家の たらさわ みちさんと 仲良しです。

 

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