今回は映画『ゆれる』について書いていこうと思う。『ゆれる』は2006年公開の日本映画。監督・脚本は西川美和で自身がノベライズも担当している。主演はオダギリジョーと香川照之。脇を伊武雅刀やピエール瀧など癖のある俳優が固め、映画は淡々と進んでいく。

『ゆれる』の概要

『ゆれる』は2006年7月に公開された、西川美和監督の2作目の監督・脚本作品だ。東京でカメラマンとしてある程度の成功を得て、気ままな生活を送っている奔放な弟と、地元に残って家業を継ぎ、独身のまま気難しい父親と地味に暮らし、生真面目な優しい兄。弟はどこかで兄に甘え、兄はそれを許容している。母の一周忌のために帰省した弟が、兄弟の幼なじみで、弟の元彼女でもあった女性と渓谷へ遊びに出かけ、その時女性は吊り橋から転落死する。その時そばにいた兄が容疑者として逮捕され、自分が手を下したと自供を始める。兄の無実を信じていた弟は兄のために奔走する。しかし今まで均衡を保っていた兄弟の関係は徐々に揺れ始める。物語は兄弟それぞれの葛藤と、揺れ動く深層心理にスポットを当てながら淡々と進んでいく。


これは単なるクライムサスペンスではない。兄弟それぞれの葛藤と、だんだんと露呈するお互いの深層心理にとまどいながらも、なんとか自分が知っている兄の「本当の姿」を取り戻そうとする弟。今まで弟にまったく見せなかった一面をだんだんと出すようになるものの、結局はそれを理解してほしかったのさえ最後までわからない兄。この映画を観るそれぞれの人の心情も「ゆれる」ストーリーになっている。

主演2人の演技について

映画のストーリー以外にも、主演の2人の演技についても注目したい。まずはオダギリジョー。いつも奇抜なファッションで注目されるが、俳優としてはシリアスな作品でも、コミカルな作品でも、ストイックに演技をする人である。この映画では兄に無自覚なまま甘えている部分がよく出ているし、後半では色々な葛藤と戦いながら兄を取り戻そうとする姿をうまく演じていると思う。

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2007-02-23


しかしやはりこの映画は香川照之ありきではないかと思う。テレビドラマなどで「顔芸」ばかりが取り上げられるようになったが、この映画の中では始終控えめな演技で、生真面目さの中に見え隠れする鬱屈とした感情を表現している。時々不気味ささえ感じる演技は、まさに「怪演」だと思う。

物足りなければノベライズで補完!

西川監督の巧妙な演出と、オダギリジョーと香川照之の絶妙な演技で、すべてが観る側の受け取り方しだいで、観ているこちらの気持ちも「ゆれる」映画だ。人間は単純なものではなく、どんな人間でも表に出すことのない一面を持っているということがしっかりと伝わってくる。映画だけで腑に落ちなければ、西川監督自身によるノベライズ本を読むと、この映画の背景も読み解くことができる。とにかく『ゆれる』は間違いなく一見の価値のある映画だ、ということだけは言っておこう。

([に]1-1)ゆれる (ポプラ文庫)
西川 美和
ポプラ社
2008-07-31





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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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