今回取り上げるのは、映画『ベニスに死す』。イタリアの巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品だ。出演はイギリスの名優ダーク・ボガード、そしてその美貌で有名になったビョルン・アンドレセンなど。ヴィスコンティ監督独自の美学で彩られた世界が魅力的だ。

『ベニスに死す』とは?

『ベニスに死す』は1971年に公開されたイタリア・フランス合作の映画だ。トーマス・マンによって書かれた同名小説を原作としている。同じくヴィスコンティが撮った『地獄に堕ちた勇者ども』『ルートヴィヒ』と合わせ、ドイツ3部作と呼ばれている。しかし『ベニスに死す』は主人公がドイツ人ですが、他の2作のようにドイツ自体を舞台にした映画ではない。舞台になるのはタイトルどおりイタリアのベニス(ヴェネツィア)だ。

ヴェニスに死す (岩波文庫)
トオマス マン
岩波書店
2000-05-16


1900年代初頭、勤勉かつとても真面目にベルリンで活動してきた高名な作曲家・指揮者であるアッシェンバッハは心臓を悪くし、休養のためにベニスにやって来る。滞在を決めたホテルで、彼はポーランド人の一家に出会う。その中にいた美しい14歳の少年、タッジオに心を奪われた。自らの老いもありスランプに陥ってはいたが、勤勉さと気高い精神こそが美しいものを生みだすと信じてきたアッシェンバッハが、ただそこにいるだけで圧倒的に美しいタッジオにすっかり魅了され、信念は崩れていく。このタッジオへの執着、言い換えれば美への執着が最終的にはアッシェンバッハを破滅へと導くことになるのだが、そこはぜひ実際に映画を観て欲しい。きっと納得できるはずだ。

ベニスに死す [DVD]
ダーク・ボガード
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21


はっきりとしたストーリーに沿って描かれている映画ではない。しかし映像を追っているだけで内容は伝わってくるので、決して小難しい類いの映画ではない。貴族の傍流として生まれ、14世紀に建てられた城で育ち、幼いころから芸術に慣れ親しんだというビスコンティ監督独特の、耽美かつ退廃的な美学に彩られた映像の中の世界に浸ってみて欲しいと思う。

やはりビョルン・アンドレセン!

時に滑稽で、時に悲哀を感じさせる主人公、アッシェンバッハを演じたのはイギリスの名優、ダーク・ボガード。1963年の『召使』と1965年の『ダーリング』で英国アカデミー賞を受賞している。ビスコンティ監督の『地獄に堕ちた勇者ども』にも出演している。

ベニスに死す (集英社文庫)
トーマス マン
集英社
2011-08-19


しかし、なんといってもこの映画で注目すべきは圧倒的な美の象徴、タッジオを演じたビョルン・アンドレセンだろう。ヴィスコンティ監督がヨーロッパ中を回ってタッジオに相応しい少年を探し、目に止まったのが彼だ。その美貌からアイドル的な人気も出たものの、本人は俳優業にあまり興味も執着もなく、現在は普通の生活を送っているそうだ。当時ファンだった人には申し訳ないが、良かったと思う。圧倒的な美の象徴が老いていく姿はあまり見たくはないから。


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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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