荒唐無稽なのにとんでもなく魅力的な映画というのがあるが、今回の『太陽を盗んだ男』がまさにそうだ。1979年に公開された映画で、主演はトップアイドルだったジュリーこと沢田研二、共演は菅原文太、池上季実子ら。これだけでもかなり豪華な顔ぶれだと思う。もう何度観たのかわからないくらい、観た。とにかく好き過ぎるくらいに好きな映画だ。

一体何がしたいんだ?

中学の理科教師、木戸誠(沢田)は生徒に混じって遅刻したり、授業中にガムを噛みながら居眠りしたり、まったくやる気のない日々を送っている。ある日バスジャック事件に巻き込まれ、そこで身を挺して人質を守り、犯人確保をする山下刑事(菅原)に触発されたように、とある計画を進める。それは自分の力で原爆を作り出すことだった。

深夜の自室で原爆を完成させた木戸は狂喜して、ラジオから流れるボブ・マーリーの「Get Up Stand Up」を歌い踊る。ちなみにこのシーンはジュリーのアドリブらしい。コミカルさもあって木戸の喜びが頂点に達したことが伝わる良いシーンだと思う。


しかしこれといった思想や目的もなく、衝動にかられて原爆を作り上げたはいいが、どう使えばいいのかがわからない。「一体俺は何がしたいんだ?」そんな疑問をつぶやいてしまうほど、わからないのだ。バスジャック事件で知り合った山下刑事を窓口として指定し、次々と要求を突きつけて叶えてはいくが、結局満たされることはない。待っている結末は……。

独特の熱と音楽、そして長谷川監督

公開当時は豪華キャストなのにヒットせず、カルト映画扱いされていたらしい。しかし、じわじわと評価が上がっていって、今や邦画の名作ランキングでもかなり高順位を取り続けるようになった。確かにストーリー自体は荒唐無稽だが、製作側の熱のせいなのかぐいぐいと惹きこまれていく不思議な映画だ。

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音楽も良い。山下刑事のテーマ曲であった「YAMASHITA」は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破』で使われていた。庵野監督がこの映画に多大な影響を受けたからだと聞く。個人的にはカーチェイスの場面で流れるBGMがとても好きだ。高速道路を走っている時にこの曲を聴くと気分が出るのでスマートフォンに入れてあるくらいだ。



ちなみに長谷川和彦監督は1976年に『青春の殺人者』でデビューした。『太陽を盗んだ男』は2作目の作品だ。『青春の殺人者』も衝動から親を殺す少年を題材にした名作だ。どちらも観ているが、個人的には『太陽を盗んだ男』が好きだ。現時点で彼が監督をしたのはこの2本だけである。3作目を観たいと思うものの、今の時代ではもはや彼のようなスケールで映画を作ることが難しいのかもしれない。それがとても残念だ。

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madokajee

旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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