新井千裕は1986年に「復活祭のためのレクイエム」で第29回群像新人文学賞を受賞した作家だ。この新人賞をとった人を時系列順で並べると、村上龍、村上春樹、笙野頼子、伊井直行と多和田葉子、阿部和重のあいだになる。タイトルはどの作品でもよかったのだけれど、どうせ、どれを挙げても知らない人の方が圧倒的に多数派だろうし「ミドリガメ症候群」にしておいた。



新井千裕の著作リスト。手元にある本を挙げていく。

「忘れ蝶のメモリー」(単行本、講談社、1990年)
「ミドリガメ症候群」(単行本、扶桑社、1990年)
「復活祭のためのレクイエム」(講談社文庫、1990年)
「天国の水族館」(単行本、PHP研究所、1991年)
「チューリップ・ガーデンを夢みて」(単行本、朝日新聞社、1991年)
「100万分の1の結婚」(単行本、PHP研究所、1992年)
「ソーダ水の殺人者」(単行本、光文社、1992年)
「逆さ馬のメリーゴーラウンド」(単行本、中央公論社、1997年)
「恋するスターダスト」(単行本、講談社、2005年)
「図書館の女王を捜して」(単行本、講談社、2009年)
「プール葬」(単行本、中央公論新社、2014年)
「あおむけで走る馬」(文庫本、中央公論新社、2014年)

年代を記したのは1990年から92年にかけて一気に本が出て、その後、しばらく音沙汰がなかったことを言いたかっただけだ。1997年の「逆さ馬のメリーゴーラウンド」で作家活動からは完全に遠ざかったかと思ってただけに、2005年の新作「恋するスターダスト」は驚きだった。その後、今度こそやめたのかな?と思っていたら「図書館の女王を捜して」と「プール葬」を発表してくれた。寡作でもいいからこれからも新しい小説を出して欲しい作家のひとりだ。

図書館の女王を捜して
新井 千裕
講談社
2009-03-24


プール葬 (novella*1200)
新井 千裕
中央公論新社
2014-12-19


はじめに読んだのは「ミドリガメ症候群」。たしか、その次に「忘れ蝶のメモリー」を買ったような覚えがある。もちろん、初めての1冊目を気に入っていなければ同じ作家の2冊目以降なんて目を通すこともない。

当時、華美な言葉やきれいな文章ってやつに嫌気というか疑問を感じてた。それはおそらく、もっと簡単な言葉で世界を表現できないのかなって単純な思いと、いわゆる「美しい」とされる「ふつう」の言葉は使いたくないという天の邪鬼からきている。喩えれば、ありふれた耳障りのよいポップスよりも、XTCみたいなひねくれたポップスの方が心地よかったんだよね。そんな感じの時期だったんで、新井千裕の作品に出て来る言葉遊び的な部分や少しずれたシチュエーションに「いい感じ」という思いを抱いたのだと思う。かなりの影響を受けた。それは……それっていうのは「ふつう」の言葉を使いたくないっていう部分……毎日を過ごしてるなかで基盤のひとつにしっかりと組み込まれていると実感する。今でもそうだ。





動画はペット・ショップ・ボーイズが1986年に発表したデビューアルバム『ウエスト・エンド・ガールズ』のタイトル曲。原題は『Please』。「復活祭のためのレクイエム」が発売されたのも1986年。流行した曲と並べると、とんでもなく遠い昔のような気もする。曲を聴いたり、文章を読んでいるときにはそれほど時の流れを感じたりしないのが不思議だけどね。そのときどきの自分の心境に応じて、さまざまな感情を浮かんでくる。自分にとって良い作品ってそういうものだよね、きっと。

In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
West End girls

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yosh.ash

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