あまりミステリーは読まないのだが、さすがにこれは読んだ。『火車』(宮部みゆき)だ。出版された当初はちょうど生活が変わりばたついていたため、文庫本になったところで手に取って読み始めた。読んだ友人たちが口を揃えて大絶賛していたが「本当にそんなにすごいの?」と斜に構えた気持ちで読み出したのを覚えている。ちなみに1993年度の『このミステリーがすごい!』でも2位にランクインしている。

プロットなし!張り巡らされた伏線に引き込まれる

読み始めると、何重にも伏線が張り巡らされているのに混乱することもなく、とにかくぐいぐいと小説の世界へ引き込まれていった。物語は借金、自己破産、殺人、戸籍の乗っ取りと穏やかさとは程遠い物騒な言葉が溢れかえっている。当時はサラ融(今で言う消費者金融)からの借金やカード破産などが激増して社会問題になっていた時期だ。自己破産に対する心理的な壁も今よりもっと高かったように思う。現在であれば貸金業法やら、個人情報保護法などがあって、当時彼女が描いたような世界は成立しにくいかもしれないが、そこはわからない。何事にも裏をかく方法はあるから。

火車 (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社
1998-01-30


小説の中で捜索される2人の女性のことも心に引っかかった。もちろん、罪は罪だし、手段も間違っているがどちらもただ幸せになりたかっただけの女性だ。その2人がそれぞれのきっかけで転落しながら出会ってしまったのが最大の不幸だったのだろう。それに関しては少し苦い気持ちになった。

とにかく、一気に読み終えた感想は、私ごときが言うのもなんだが「上手いな~」だった。これだけの伏線をちりばめた小説を書くのだから、相当緻密なプロットを作っているのだろうと思っていたら、何かのインタビューで「私はプロットを作りません」と語っているのを読んで2度びっくりした。よくこんがらがらないものだ……。ミステリーをあまり読まない私も『火車』をきっかけにして彼女の小説はいくつか読んだ。

2度のドラマ化、そして映画化

『火車』は2度ドラマ化されている。最初は1994年、次は2011年。私は2011年版を観たが、なかなか忠実にドラマ化されているなと感じた。そして2012年には『火車 HELPLESS』として韓国で映画化されている。残念ながら日本での劇場公開はなかったが、WOWOWで放送されたようだ。ストーリーや登場人物はかなりアレンジされているらしいので、観てみたいような観たくないような複雑な気持ちだ。


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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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