「エンジン・サマー」ジョン・クロウリーの単行本が福武書店(現:ベネッセ)から出版されたのは1990年だった。で、そのまま絶版。しばらくは、古本屋で樋口一葉1枚ぐらいの値段がついていた。2008年に、ようやく扶桑社から文庫本として復刻するまでの間だね。



バカみたいに新刊本は出るし、大型書店も様々なところに建ってるけど、やっぱり棚に並べられているのは売れ筋のものばかり。それが楽な流通と資本主義の賜だとしても気に入った本が絶版になるのは哀しいことで。

この本もそう。

エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)
ジョン クロウリー
扶桑社
2008-11


訳者が「現代SF1500冊 乱闘編 1975―1995」(大森望)で★★★★★を付けているけれど、個人的にもものすごく好みだったりする。ただ内容はSF畑の端っこの方って感じ。純粋にSF好きな人はおそらくちょっと苦手な部類に入るような気がする。

うまくいけば福武文庫にってことになったんだろうけど、福武書店が文芸関係から撤退したのでその可能性は消え去った。あとはどこかの出版社に期待するしかないと思っていたら、まさかの扶桑社だった。

パッと思いつく福武書店からの復刊本としては「黒い時計の旅」スティーヴ エリクソン(白水Uブックス)とか「天国が降ってくる」島田雅彦(講談社文芸文庫)とか。どのように翻訳や出版の権利が動いているのは謎だ。このあたりの出版事情、よく分からない。

ジョン・クロウリーの「エヂプト」も、早川書房から「夢の文学館」シリーズのひとつとして1996年ぐらいに出る予定だったけれど、どうやらそのままお蔵入りになったみたいだ。もしかしたら、売れない海外SFの4部作が嫌われたのかもしれない。

リトル、ビッグ〈1〉 (文学の冒険シリーズ)
ジョン クロウリー
国書刊行会
1997-07




リトル、ビッグ〈2〉 (文学の冒険シリーズ)
ジョン クロウリー
国書刊行会
1997-07


※世界幻想文学大賞とネビュラ賞(長編小説部門)を受賞した「リトル、ビッグ」。


いい作品というか、今現在、流通にのってないのが残念なものがかなりの数、埋もれてる。せめて不遇な状況になって欲しくない。それが出版業界や文学界の危機だに直結した問題だとは単純に思わないけれど。例えれば、いつも行くコンビニにお気に入りの「あめちゃん」が売ってない。そんな不安感がするんだよね。



ナイチンゲールは夜に歌う
ジョン・クロウリー
早川書房
1996-09


古代の遺物 (未来の文学)
ジョン・クロウリー
国書刊行会
2014-04-30


※現在、入手できるジョン・クロウリーの著作(翻訳)。それにしても単行本が多い。

この記事を書いた人

yosh.ash

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