今回は私の大好きな『檸檬』(梶井基次郎)について書いてみようと思う。短編集になっていて、20作の短編が収蔵されているが、何と言っても有名なのは表題作の『檸檬』だろう。次いで『桜の樹の下には』だろうか。どちらも彼の独特の感覚が味わえる良作だ。

今も色褪せない魅力的な『檸檬』

梶井基次郎の作品は少ない。それもそのはず、彼は31歳の若さで肺結核で亡くなっている。しかし、彼の作品はその死後に評価され始め、教科書に載ったりまでしている。私も『檸檬』を初めて読んだのは教科書だ。授業の時間も忘れて入り込み、頭の中で見たこともない京都の街を漂い歩き、八百屋でレモンを手に入れ、丸善へ向かう。その心の動きに夢中になった。単純に言ってしまえば病んだ青年の妄想が繰り広げられているだけの話なのに、なぜこうも惹きつけられるのか、と不思議に思いながら貪るように読んだ記憶がある。


檸檬 (角川文庫)
梶井 基次郎
角川書店
2013-06-21


しかしそう感じたのは私だけではなく、その証拠に京都の丸善本店にはレモンが置かれることが頻発したらしい。今は当時の丸善本店はなくなり、2015年に新しく丸善本店が復活したが、その時には店頭に大量のレモンが置かれ、「好きな場所に置いてください」という粋なはからいがあったそうだ。ちなみにカフェも併設されている。

突き抜けた感性とデカダンス?

教科書の『檸檬』を読んですぐに、実家に父親の日本文学全集があったので、他の作品も一気に読んだ。文庫本を買ったのは大学生になってからだったと思う。何度も読んでボロボロになってしまったので、今手元にあるのは2代目の文庫本だ。

梶井基次郎の魅力について考えてみると、これがなかなか難しい。短命だっただけに確固とした文学的思想も感じられない。ただ、本人の病のせいもあるのだろうが、なんというか、ある種の突き抜けた感性とデカダンスを私は感じる。そしてどことなく妖しいきらびやかさも感じる。『桜の樹の下には』などは短編というより散文詩に近いとも思う。私は桜の木が大好きで、季節になるとあちこちに眺めに出かけるが、特に京都で見る桜の木は少しぞくっとするような妖しさを感じる。これも彼の作品の影響だろうか。

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さあ、この短編集を読むにはやはり丸善本店に併設されているカフェが良いだろう。残念ながら私はカフェにはまだ足を運んでいないが、『檸檬』をモチーフにしたケーキや、丸善創業時のものを再現したハヤシライスが人気らしい。ここで思う存分、彼の世界観に浸ってほしい。そうそう、現在はレモンを置くことはできないので、そのつもりで。

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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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