3回にわたる、大槻ケンヂさん率いる筋肉少女帯が1994年に世に送り出したトラウマメタルの名盤『レティクル座妄想』についての全曲語り。最終回。ぼくのマインドはもうズタボロです。

前回前々回も読んでくだされば、主に15年くらい前に布団の中で泣いていた自分が喜びます。ていうか続けて読まないと、何いってんだかよくわからん記事だと思います・・・。というわけで、いきなり死者の話からだぜ。どういう世界観か知りたい方は、ぼくが邪気眼を発動させて書いたVol.1Vol.2も読んでくれ。


・少女は死んだ。男も死んだ。みんな死んだ。みんな闇に帰るだけだよ。

レティクル座妄想
筋肉少女帯
MCAビクター
1994-04-21



死者となった少女たちの次は、1人の男の死について重々しく歌い上げる『ワダチ』。「別に犬死にでいいじゃない」「別にはかなくていいじゃない」「別に不幸でもいいじゃない 闇に帰るならば」と厭世観にまみれた内容の歌詞に、B級戦犯として処刑された学徒兵の木村久夫氏の遺書の引用を乗せた、なんとも陰鬱な曲。この遺書の部分の語りは恐ろしいまでに病んでいる・・・ので、シャッフルでこれが流れてくると実にキツイ。演奏めちゃくちゃカッコイイけど。


・6年後の世界は、かつて憧れた世界。でも虚し。『ノゾミのなくならない世界』


『ノゾミのなくならない世界』は、大槻さんがエッセイで愚痴っていた「全盛期にはキャーキャー追いかけて来るのに、そのうちに飽きてしまってバンドやメンバーを捨ててしまうファン」について露骨に歌った内容(なお、このファン離れ現象については「思春期の発作だから仕方ない」というようなまとめ方をしていたと記憶)。

生前のノゾミは元バンギャだったらしく、憧れのミュージシャンにCDだ物販だと貢ぎに貢ぎ、気合いの入ったコスプレでライブに参戦していたそうですが、ある日になって飽きてしまい、ライブにも行かなくなり興味が薄れてしまったようです。

しかしそれから6年後。死者となったノゾミは、レティクル座で執り行われたポルカのパーティーで、憧れのミュージシャンと踊ることになります。ここでの憧れのミュージシャンは、前曲『ワダチ』で死んだ男だろうか・・・。


「あなた あたしの青春だった」
「どうもありがとう それより踊りましょう 想いは冷める 気にすることないよ 誰だって同じさ」
踊るポルカの夜



憧れのあの方とのダンス&キッス。6年前ならば瞳を輝かせていたでしょうが、現在のノゾミの感情は冷めています。心の通わない、空々しいパーティー。呪いのような妖しい女声コーラスと悲しいアルペジオをBGMに、宿命の夜はあっさりと幕を閉じます。


・死ぬ前にパリでヒャッハーするぜ!・・・あー気持ちいい・・・あれ?・・・もう死んでたわ!

そんな2人からは遥か遠くパリの地で、主人公はエクトプラズムの人とデートをしていました。何を言っているかわからねえと思うが・・・、まあ文字通りです。オシャレなParisの街で、凱旋門とかシャンゼリゼ通りとかでヒャッハーするのです。


亡霊とオレはパリを行く
もうすぐオレも消えるから
セーヌの流れに消えるから



しかし、主人公の寿命もあと少し。恋人の亡霊というのは、死者となった「香菜」でしょうか。楽しい旅行をしているうちに、いつの間にかレティクル座の花園に迷い込んでしまいました。そこには、幸せそうにつぶやく桃子の姿が見えました。

実質的なラストを飾るバラード『レティクル座の花園』は、ここでようやっと訪れた救いの世界。懐かしいあの人がいる。大好きだったあの人もいる。むかし飼っていた犬のポチもいる。みんなニコニコの優しい世界。みんなそれぞれが幸せになれる世界。・・・意識したのか?っていうくらいXっぽいけど・・・相当にキーが高い。ああ・・・意識が遠のく・・・ここは・・・あれ?


・妄想だよ!妄想だよ!全部、お前のヘタクソなマンガの中身だよ!

花園なんて妄想でした。やっぱり・・・とは思っていたけど、妄想でした。

連れて行かれた先は、法廷。レティクル座への超特急で行われて以来の、11曲ぶり2度めの裁判。今回はいきなり最高裁へとシフト。人間狩りが社会的に認められ、くだらない人間は狩られる側に回っていただくことに。皆様がたがくだらないか否かを決定するのは、

・ルイス・キャロル(1832-1898 作家・数学者)
・ハリー・フーディーニ(1874-1926 奇術師)
・マリリン・モンロー(1926-1962 俳優)
・ジム・モリソン(1943-1971 歌手/レティクル座公式テーマソング『水晶の舟』作曲者)
・江戸川乱歩(1894-1965 作家)
・ツタンカーメン(B.C 1342-B.C 1324頃 ファラオ)
・風船おじさん(1940-1992以降消息不明 調律師・自称冒険家)

など、グローバルに各方面から集められた豪華な審査員の方々です。司会者は「飼い犬が手を噛むので」と言って先に帰ります。最後にこう残して・・・。


ハハハ ダメなヤツはダメなんだ!
おまけの人生に向かってGO!GO!GO!
ダメなヤツはダメだようー



うるせええええっ!なんやねんお前!・・・でもつまらない人間ではないという証明ができぬ・・・できぬ・・・。もうレティクル座もダメだ!俺を嗤うな!俺を笑うな!おれをあわいふぁjらfはおfはhふぁdjかdfkjふぁば・・・。

・・・ああ、嘲笑が聞こえる・・・嘲笑が聞こえ・・・ちょうしょ・・・(BAD END)


・悩める者たちよ、メタルを聴いてエッセイを読め。

以上。全12曲。51分40秒。ドグラでマグラなる世界観に、キミはついていけるか?

ベテランの筋肉少女帯のファンの中では、本作、あるいは『月光蟲』(こちらも奇妙な作風)を最高傑作に挙げる方が多いと聞きます。自分もやっぱり歴代で本作が一番かな・・・と。

ただ、この次のアルバム『ステーシーの美術』で死から戦う方向性へとシフトし、バンドとしては最悪の状況下だったという活動休止前最後のオリジナルアルバム『最後の聖戦』の作風も好きです。大槻さんの著書『リンダリンダラバーソール』『90くんところがったあの頃』では、その時期の心情が赤裸々に書かれているので、併せて読むとより楽しめて、より痛いです。



90くんところがったあの頃 (角川文庫)
大槻 ケンヂ
KADOKAWA / 角川書店
2015-03-10



この記事を書いた人

プラーナ

henkou_ver

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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