さあ、今まで触れていなかった『コインロッカー・ベイビーズ』(村上龍)について書いてみようと思う。ちなみに『コインロッカー・ベイビーズ』は私が今までの人生で読んだ小説の中で「ベスト3を挙げよ」と言われれば必ず入れる作品だ。初めて読んだ高校生の時に受けた、強烈な衝撃はいまだに忘れられない。

『コインロッカー・ベイビーズ』の魔力

『コインロッカー・ベイビーズ』は現在は新装版として1冊にまとめられているが、私が読んだ当時は上下巻に分かれていた。デビュー作である『限りなく透明に近いブルー』を読んでいたこともあり、似たような路線の作品かな、と思いつつ、書店で上下巻を書い、読み始めてみると……とんでもない本に手を出してしまった!と思ったが、読み進めるのを止めることができなかった。できることなら学校もサボって、一気に読んでしまいたいと思うほどぐいぐいと作品の中に引きずり込まれた。





コインロッカーの中に捨てられ、命を吹き替えした主人公のハシとキク。絶妙なタイミングで存在感を見せつけるアネモネ。ハシとキクの養母。キクのパトロン。描かれる人物は誰も彼もが必要不可欠。またハシとキクの育った島の様子、無法地帯として描かれる薬島。シチュエーションにも無駄がない。決して読みやすくて明るい小説ではない。だが最後には「EXIT」のランプが遠くに輝いているのが見える。

特筆すべきは文章のスピード感、リズム感。改行もなく、延々と句点だけで繋がれる部分があると思えば、ほんの一行で空気を変える。そのバランスの絶妙さ加減に「これ、どうなっているんだろう」と思い、高校生の私は『コインロッカー・ベイビーズ』を何日もかけて丸々ノートに書き写した。そしてたどり着いた答えは「この人、天才だ!」だった。あんなに緩急のバランスが取れた文章は他の誰にも書けない。あんな文章を書けたのはあの当時の村上氏だけだと思う。

幻の映画化、でもこれで良かった

『コインロッカー・ベイビーズ』は当然のように映画化の話が持ち上がった。大まかなキャストまで決められたが、今に至るまで映画化はされていない。小説の完成度を考えると、監督を始めとしてふさわしいキャストを揃えるのも至難の業であったろう。少々残念に思いつつも、やはり映画化しなかったほうが良かった、という思いもある。

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しかし、2016年になって音楽劇として上演はされたようだ。個人的な感想で申し訳ないが、キャストに全く興味を覚えることができず、「あー、そうなんだ」で流してしまった。やはり私の中では小説が一番であるし、小説であれば自分の頭の中で好きなように人物もイメージできる。

『コインロッカー・ベイビーズ』はどこで読んでもいい。乱暴な言い方をすれば、読んでいるシチュエーションなどおかまいなしに全力で小説の世界へ読む人を引きずり込む力を持っている。だからどこで読んでもいい。どっぷりとハマってどんどんページを繰ってほしい。

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madokajee

旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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