横溝正史や江戸川乱歩などの古い探偵小説→ラヴクラフトなどの黒い背表紙の創元推理文庫→……と来れば、必然的に夢野久作にぶち当たる。夢野久作といえば「ドグラ・マグラ」。どうしても、この傑作?怪作?を抜きには語れない。

「ドグラ・マグラ」には解説なんて言葉が入らない

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
夢野 久作
角川書店
1976-10-01


日本の探偵小説3大奇書のひとつと言われてる。3冊とも読んだがこの「ドグラマグラ」が断然一番。というか、これまで読んだ小説のなかでおそらくトップ3に絶対入る。はじめて読んだのはたぶん十代の終わりだったと思う。冒頭からのけぞった。

巻頭歌

胎児よ
胎児よ
何故踊る
母親の心がわかって
おそろしいのか

「ドグラ・マグラ」夢野久作 より

そして、「…………ブウウ――――ンンン――――ンンン………………」という時計の音。病室。壁の向こう側から聞こえる少女の声。

もう完璧な出だしだ。

「ドグラ・マグラ」をめぐる2冊の文庫本

手持ちの「ドグラ・マグラ」は2種類ある。どちらも文庫本だ。角川文庫(上下巻)と現代教養文庫。どちらも表紙がいい。特に角川版の米倉斉加年さんが描いた絵は最高だ。今なら「押絵の奇蹟」などの角川文庫も米倉さんなので、絶版も含めてすべて集めたくなる。ちくま文庫から「夢野久作全集」が発売されていたけれど、表紙が今ひとつで萎えるんだよね。

ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)
夢野 久作
角川書店
1976-10-01





○で◎な映画「ドグラ・マグラ」

1988年に映画化された「ドグラ・マグラ」。当然、観にいった。もちろん映画館で。珍しくパンフレットまで買った。映像化するという心意気だけで○。内容はダイジェスト版って感じだけど、やっぱり桂枝雀さんの演技が◎。おそらく、今後も含めて、松本俊夫監督以外、映画化しようなんて考えない……と思う。

映画のポスターやパンフレットの表紙を描いているのは太田螢一だった。太田螢一といえば、ゲルニカや、ヒカシューなどのジャケットが印象深い。こんなサイトを眺めていると、いろいろなグッズが欲しくなる。太田螢一の公式サイト? OOTA KEITICLE http://www.h2.dion.ne.jp/~keiticle/



脳髄がぐるぐる回る「ドグラ・マグラ」

この小説を解説するのは間違っている。ある意味、幾通りかの解釈をすることはできるけれども、そんなことに意味はない。意味があるとすれば、そんな幾通りかの解釈をすべて自分のなかで均等に受け入れることが必要なぐらいだ。そう思う。

「脳髄」がぐるぐるまわる様子を楽しむのが適切な愉しみ方ではないのかな?そういう観点でいうと、A or B ?とかA→B→Cとかに属されてる「脳髄」には不向きな本かもしれない。構造が無限ループになってる小説はいくつもあるし、それは夢でしたっていうオチぐらい使い古されたものだけど、この小説はものすごくうまくできている。

とにかく、脱帽。脱帽な小説だ。

……ブウウウ…………ンン…………ンンン…………。

「ドグラ・マグラ」夢野久作 より

「ドグラ・マグラ」の小説はこんな文章で終わる。たぶん、内容は理解不能だろう。だから、もう一度、最初から読みたくなる。巻頭歌から。でも、おそらく何度読んでも理解不能を脱することはできない。ただただ、ぐるぐる回る。そんな小説だ。


この記事を書いた人

yosh.ash

文章と音楽。灰色の脳細胞です。
*Respective Colours* Organizer
Respective Colours *Magazine*  twitter  


スポンサーリンク