安室奈美恵さんが先日、引退を発表されました。彼女を初めて見たのは小学生の頃。そのオーラはとてつもなくて、『How to be a girl』という曲のPVを当時のテレビ音楽番組『歌の大辞テン』で視るたびに見惚れていました。しかし同じ時期にもう1人、自分がとてつもないカリスマ性を感じた歌手がいます。それが、1997年の河村隆一さんです。

・1997年の甘い素顔。

1997年の1年間を通しての彼のテーマは「natural」。派手な衣装や化粧をまとって非日常的な世界を演出するのが仕事であるヴィジュアル系、更にそのヴィジュアル系の雛型であるところのLUNA SEAとはまるで真逆の立ち位置。とはいえ、前年のLUNA SEAのアルバム『STYLE』ではリアルな日本のご時世を暗喩した作風の曲もあったりするので、別にいきなり架空の世界から現実に降り立ったというわけでもないのですが。

とはいえ、LUNA SEA時代からの変化は凄まじいです。いま見ても。

LUNA SEA
LUNA SEA
エクスタシー
2000-09-13


1997河村隆一―natural
田家 秀樹
ビクターエンタテインメント
1998-01


上の画像の真ん中にいらっしゃる髪の毛をおっ立てた怖い兄ちゃんと、下の画像の清楚っぽいイケメン兄ちゃんは同一人物。いやまあ上は1991年、下は1997年。6年も経てば人は変わるけれども・・・バンドマン以外の芸能人も含めて考えても、ここまで激しく変化した例はあまり見かけない。

自分はLUNA SEAのRYUICHIさんよりも先に、河村隆一さんを先に知りました。「今は、ラララ・・・狂って痛い。」と眼を見開いて歌うRYUICHIさんよりも先に、「I love you いつまでも Uh... この胸を Ah 焦がしてゆく」と恍惚としながら歌う河村隆一さんを先に知ったのです。

毎週水曜日、『るろうに剣心』を視聴し終えた直後にチャンネルを替え、当時のランキング歌番組『歌の大辞テン』を視聴するのがお決まりだったのですが、年間を通してヒット曲を連発していたので、たった1年間の活動であったのもかかわらず、年末にはもう、河村隆一という人は何年も昔からいたベテラン歌手なのでは?と錯覚しそうでした。

この年のラストシングル『Love is...』なんて街のいたるところで流れていて、もはや国民のアンセムになりそうな・・・はさすがに言い過ぎなのですが、小学生当時の自分にはそのくらいのインパクトでした。アンセムはともかく、その後10年以上もずっとカラオケの定番となりましたね。真面目な場面でも、額に皴を寄せてモノマネして歌う笑い場の提供源としても(これは半分コロッケさんのせい)。


・スキャットの多さこそが真骨頂。『Cranberry Soda』



6曲入りのミニアルバム。この時期の河村隆一さんの歌詞カードは「wow」とか「oh」などのスキャットも丁寧に記されていて、いかにもカラオケ全盛期という印象があります。このスキャットの多さが嘲笑されることもありますが、これこそが1997年の河村隆一さんの魅力。LUNA SEAでも結構「wow」「oh」は多いのですが、それともまた違う趣。 インターネット上で「ぼおおお唱法」などと弄られたのも頷けるくらいに独特で恍惚たる「wow」「oh」が聴けます。 

6曲めの『DEMO』は、フォークギターをジャカジャカ弾きながら「ララララランララー♪」と鼻歌を歌っているだけのラフな内容。でも完成形として次のアルバムに収録される『でも淋しい夜は...』よりもこっちの方がなんか好きなのは、もしかしたら自分は河村隆一さんの「雄叫び」が好きなのかもしれない。実際、甘々なラブソングだらけの歌詞の内容は割りと聞き流している(オイコラ)。ただ、「溢れるばかりのメディアの中を上手く泳ぐのも楽じゃないけど」と、メディアの渦中にいる当人が歌うのは何気に凄い気がする。


・究極の愛とナルシシズム。歌詞カードより俺を見ろ。『Love』

Love
gai RECORDS
2013-03-21



1997年の活動の締めくくりと言うべき、ソロとして初のフルアルバム。前作『Cranberry Soda』では収録が見送られたヒットシングル4曲に加え、酒井法子さんに提供した曲のセルフカバー、自身がプロデュースしたボーカルグループであるSay A Little Prayerに提供した曲のセルフカバー、THE ALFEEのたかみーこと高見沢俊彦さんとの共作でありタイトルチューンともなった『Love』、さらに前作の『DEMO』の完成形でありライブバージョンの『でも淋しい夜は...』、前作のリミックスである『SE,TSU,NA』(上述の「溢れるばかりのメディアの中を~」の歌詞がある曲)も収録の全16曲。

ここまでやって売れない方がおかしい。というわけでめっちゃくちゃ売れましたが、あまりにも売れてLUNA SEAの記録はおろか、男性ソロアーティストの売り上げ枚数の最高記録を叩き出してしまいました。約320万枚。この記録は、20年が経った2017年現在でも未だ塗り替えられていません。

歌詞カード内には、とにかく彼の写真が所狭しと敷き詰められ、ページによってはもはや歌詞の文字が読み取れなくなっているほど。もはや写真集。この方は自分のことが本当に大好きなナルシストで、その自分の売り出し方も物凄く良く知っていて、惜しげもなくそれを実行することに快感を覚えるのだろうなと。当時、ライブ会場にご自身の所有するフェラーリのマシンを展示していたそうですが(上に貼った著書『1997 河村隆一-natural』にそのあたりのことが書かれています)、ある意味では捨て身にも思えるほどのその自己陶酔ぶりが、1997年の河村隆一という人物のカリスマたる所以だったのだと思います。

ただ、それは長く続きはしなかった・・・。


・4年前の残り香は確かにある。でも、時代は待ってくれない。『深愛~only one~』



2000年のLUNA SEA終幕後、河村隆一さんは再びソロ歌手として活動し、翌年の末には2ndアルバム『深愛~only one~』がリリースされました。以前ほど甘々なテイストではありませんが、相変わらず素敵な恋の歌が満載。1997年の続きをそのままパッケージングしたかのような内容でしたが、残念ながら大ブームの再来は訪れませんでした。PVでのクネクネした踊りが話題になった『ジュリア』はヒットしたし、スナック菓子のCMに出たりお笑い番組でハゲカツラを被ったりと活動は精力的で、伝説のソロ歌手の二度目の快進撃を楽しみにしていたのですが・・・。

テレビで面白いことを言えるヴィジュアル系イケメンの席はすでにGacktさんに取られてしまい、時代的にもCDがどんどん売れなくなってしまいました。2002年にリリースされた『人間失格』では内省的な作風となり、以後は年齢を重ねると共に大人向けの落ち着いた歌手になっていきました。甘々ラブソング兄ちゃんとしての河村隆一さんに出会えたのは、1997年と2001年だけ、だったのですね。

もう一度、とは別に思いませんが、その2年限りの記憶だけ、ここに記しておこうと思います。

この記事を書いた人


プラーナ

henkou_ver

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。 

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