ひとときはアハイオ州の冬だった。
(引用:「火星年代記」翻訳、小笠原豊樹)

レイ・ブラッドベリの傑作「火星年代記」は、こんな一節で始まる。絶品だよね。名作と呼ばれる小説は最初の1行で読者を引き込んでいくものだけど、これもたまらなく上手い日本語訳だ。何度も繰り返し、読みたくなる。

One minute it was Ohio winter, with doors closed, windows locked, the panes blind with frost, icicles fringing every roof, children skiing on slopes, housewives lumbering like great black bears in their furs along the icy streets.
(引用:「The Martian Chronicles」Ray Douglas Bradburyの「Rocket Summer」)

これ、「火星年代記」の第1話というか序章にあたる。文庫本にして1ページほどの分量だ。たった1ページしかない。それなら題名を「火星年代記」にしてもいいんだけど、やっぱりここは「ロケットの夏」。ロケットという言葉の響きにある種の古びた匂いを感じ取ってしまうのはぜったいブラッドベリのせいだし、その刷り込みは未だに残ってる。

持っているブラッドベリの本はこんなとこ

所持しているレイ・ブラッドベリの本をできるだけ年代順に並べてみた。抜けている作品があるかもしれないけれど、おおよそ、こんなところだ。
  • 「黒いカーニバル」(ハヤカワ文庫)
  • 「火星年代記」(ハヤカワ文庫)
  • 「刺青の男」(ハヤカワ文庫)
  • 「太陽の黄金の林檎」(ハヤカワ文庫)
  • 「十月はたそがれの国」(創元SF文庫)
  • 「たんぽぽのお酒」(晶文社)
  • 「何かが道をやってくる」(創元SF文庫)
  • 「ウは宇宙船のウ」(創元SF文庫)
  • 「よろこびの機械」(ハヤカワ文庫)
  • 「万華鏡」(サンリオSF文庫)
  • 「スは宇宙(スペース)のス」(創元SF文庫)
  • 「火星の笛吹き」(徳間文庫)
  • 「歌おう、感電するほどの喜びを!」(ハヤカワ文庫)
  • 「悪夢のカーニバル」(徳間文庫)
このなかで気に入ってるのは最初に読んだ創元SF文庫の2冊。「ウは宇宙船のウ」と「スは宇宙(スペース)のス」。ちなみに「ウは宇宙船のウ」の原題は「R Is for Rocket」。そう、やっぱりロケット。この2冊で気に入ってるのは「いちご色の窓」「駆けまわる夏の足音」「遠くて長いピクニック」 「イカルス・モンゴルフィエ・ライト」「ぼくの地下室においで」などなど。キリがない。

レイ・ブラッドベリとサンリオSF文庫

「万華鏡」(サンリオSF文庫)。これ、簡単にいうとベスト版。すべて他の短編集に入ってるし特に手に入れる必要はなかった。記憶に間違いがなければ、古本屋で、しかも結構な値で購入した。なんといっても愛しのサンリオ文庫だからね。サンリオSF文庫から、もう1冊「ブラッドベリは歌う」も発売されていたが、これは買わなかった。

サンリオSF文庫&サンリオ文庫。それほど持ってない。ふつうに販売していた当時、高かったし、絶版になってからはさらに高くなったからね。今は少し落ち着いたけれど。「確率人間」(ロバート・シルヴァーバーグ)、「どこまで行けばお茶の時間」(アントニイ・バージェス)、「フローティング・オペラ」(ジョン・バース)、ぐらいかな。

TV版「火星年代記」と萩尾望都

「火星年代記」が映画化されるなんてニュースを読んだことがある。アメリカのパラマウントが権利をとったらしい。続報はないようだ。その後、この話がどのようになったのかは知らない。テレビ番組で映像化なら、されたんだよね。ずいぶん、昔だ。日本でも放映された。監督は「八十日間世界一周」などのマイケル・アンダーソン。脚本がリチャード・マシスンなので気合いが入っている。もちろん、観た。

火星年代記 メモリアル・エディション [DVD]
ロック・ハドソン
紀伊國屋書店
2005-12-22



「火星年代記」ではないけれど、「ウは宇宙船のウ」は萩尾望都が漫画化されている。全8編。違和感なしの、さすがは望都先生!という傑作だ。「百億の昼と千億の夜」も原作より壮大なスケールが凄まじかった。なぜに、萩尾望都がSFを描くと、これほどまでに素晴らしくなってしまうのか未だに謎だ。違和感があるとすれば「百億の昼と千億の夜」が少年チャンピオン・コミックスで発売されているぐらいかな。

ウは宇宙船のウ (小学館文庫)
萩尾 望都
小学館
1997-08-01



ブラッドベリと、のんびりした宇宙観



SFというと、どうしても派手な側面があるけれど、どうも「トワイライトゾーン」風のゆっくりとしたテンポを好む傾向があるみたいだ。スペースオペラも悪くはないけれど、登場人物の多い作品は苦手だし、かといってそれほどキャラに自分を重ねたりとかすることもない。だからいわゆるSF大作とかは今ひとつ触手がのびないんだよね。読んでも「ふむ……」って感じだし。宇宙って、もっとのんびりした時間が流れているところだと思っている。

旅行に行きたい。海外……行きたいところないな。行くなら宇宙。スペースシャトル……とんでもない。行くなら火星。ロケットにのって火星に行きたい。そんなふうに結構、真剣に思ってるのって、ブラッドベリの影響そのものだ。それ以外のなにものでもないよ。「火星年代記」の始まりである「ロケットの夏」を読むと、自分のなかにあるSF魂がキュンとして、ロケットに乗りたくなるんだ。

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)
レイ ブラッドベリ
早川書房
2010-07-10



この記事を書いた人

yosh.ash

文章と音楽。灰色の脳細胞です。
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