さて、今回も海外文学。1999年に出版されたジュンパ・ラヒリの最初の短編集である『停電の夜に』をチョイスした。この一冊に収められた作品のほとんどが夫婦や、世代間などのちょっとしたすれ違いがテーマになっていて、そのどれもがとても味わい深いのだ。

ジュンパ・ラヒリの魅力

ジュンパ・ラヒリはインド系アメリカ人の女性作家だ。両親はインド、コルカタ生まれ。彼女はロンドン生まれで三歳でアメリカに移住した移民2世だ。そして彼女の小説の主人公たちもインド系移民であったり、彼女のルーツでもあるインド人だ。キッチンや食卓、それから女性の服装など、さまざまな描写にインドのフレーバーが感じられる。

ラヒリの小説の魅力は緻密な描写と、読みやすい表現と、少しほろ苦い気持ちになる読後感にある気がする。決して軽い話ではないが、救いがないわけではなく、むしろ開放感を覚えることもある。良い意味で予想を裏切られる事が多い。これは不思議な気分だ。

ちなみにラヒリはそう多作ではない。本国では雑誌『The New Yorker』に短編が掲載されているようだが、それでもそう多くない。








低地 (Shinchosha CREST BOOKS)
ジュンパ ラヒリ
新潮社
2014-08-26



『停電の夜に』

表題作の『停電の夜に』は夫婦のすれ違いがテーマだ。停電が続くニューヨークの夜を舞台に、すれ違っている夫婦を淡々と描写しながら進む物語のエンディングをどう捉えるかで、物語の印象は大きく変わる。どちらにしろ心に響く作品であることは間違いない。実際に読んで確かめてみて欲しい。


停電の夜に (新潮文庫)
ジュンパ ラヒリ
新潮社
2003-02-28


この短編集に収蔵されている小説はどれも味があるが、私が特にお気に入りなのが、この短編集の原題でもある『病気の通訳』(Interpreter of Maladies)だ。インドに観光に訪れたインド系アメリカ人と、そのガイド兼ドライバーをするインド人との小さなすれ違いが描かれている。詳細は書かないが、これはほろ苦さと開放感と、ちょっとしたおかしさも兼ね備えた良作だ。

いずれにしろ、この短編集は本当にオススメだ。それぞれの物語の並びも上手い。とにかく一度読んでみて欲しいと思う。

さて、どこで読もうか?

ニューヨークのアパートメントの一室でゆったりと……といきたいところだが、この短編集は自室で夜に寛いで、温かいものを飲みながらじっくりと向き合うのが一番だ。そうすれば自然と言葉やストーリーが染み込んでくる。それがベストな環境だろうと思う。

この記事を書いた人

bloglogo
madokajee

旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
note  twitter 


スポンサーリンク