今回からタイトルの付け方を変更。どの本をどんなシチュエーションで読むのかを書いていくのがこのシリーズなわけで、タイトルに対象の本があったほうがわかりやすいかな、と感じたから。だが、内容は特に変わりなくいままで通りで書いていく。

釧路という街

釧路という街を知っているだろうか?もちろん街の名前くらいは知っているだろう。自然が好きな人であれば釧路湿原を思い出すだろうし、たいていの人は漁業の街としての釧路を想像するだろう。釧路は基本的に寒い街で、夏になると霧のせいでさらに空がどんよりするという。

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地方公務員だった父親の転勤先が、さらに先の根室になった時、引っ越しの手伝いに駆り出され、一泊だけ釧路に泊まった。空はどんよりとしていて、海の匂いがした。夜になって外をふらついてみたが、賑やかさもなく、仕方なくホテルと同じ建物にあったボーリング場で家族でボーリングをして遊んだ。そのため、自然資源にもあまり興味のない私には、やや閉塞感のある寂れた漁業の街としてインプットされている。

『ホテルローヤル』というラブホテル

桜木紫乃氏の小説集、『ホテルローヤル』はその釧路の街が舞台だ。ホテルは釧路の湿原にある廃業したラブホテル。人間関係や土地の閉塞感、経済状態、ごく普通の人々がどんな生活をし、どんなことに心を痛めたりするのかが、まるで覗き見でもしたかのように描かれている。一読した感想は「暗いけど、上手いなぁ……」だった。7本の短編が絶妙にリンクしているのも、また興味深い。


ホテルローヤル (集英社文庫)
桜木 紫乃
集英社
2015-06-25


たった一度訪れたことのあるだけの私にも、桜木氏の目線で見た釧路の人々の暮らしや街は頷かざるをえない説得力があり、何度も読んでいるうちに、その目線の部分にとりこまれてしまった気さえする。確かに明るい小説集ではない。けれどその先に光が見える短編もいくつもあって、これは本当にプロの文章だなとすっかり感心してしまった。

ホテルローヤル
桜木 紫乃
集英社
2013-01-04



詳細はぜひ読んでもらいたいので、今回も書かない。

うらぶれたホテルで

この小説は贅沢を言えば釧路のビジネスホテルやラブホテルにでも泊まって、長い夜を過ごしながら読むのが一番だと思うが、本を読みにラブホテルに行く人などいない(私の知る限りでは)。だからどんな街でもいい。うらぶれた街のどこにでもあるであろう、ややうらぶれたビジネスホテルのベッドに転がりながら、コンビニエンスストアで買ってきたビールでも飲みながら、じっくりと読んでほしい。読後感はやりきれないものも多いが、そこに見える光を感じられたらOKだ。

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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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