今回は、『女々しくて』女々しくてつらい、ゴールデンボンバーです。演奏をしないヴィジュアル系「エアバンド」として有名な彼らですが、その魅力とは一体なんなのでしょう。
・誰もツッコまなかった部分を、あえて真正面からツッコむ醍醐味
街中ですれ違ったら二度見してしまいそうな派手なメイクと衣装に身を包み、自らをヨーロッパの貴族だとか称したりするけども、実際はのどかな地方都市の出身で地元では「岡やん」と呼ばれていたりする、それがヴィジュアル系。とにかく、キャラクターを演じ切ることに意義がある。
ただ、その流れも近年は変わってきていて、本来は雲の上の方々であるはずの芸能人の方々が今日食べたラーメンの写真をAmebaブログにアップし、Twitterで会話できてしまうこともあるのが2010年代の現状。
それでもなお、どんな私生活を送っているのかさっぱりわからん格付け王のGACKTさんみたいな方もいますが、それはもはや例外で、今やそんな2.5次元みたいな人物は珍しいのではないでしょうか。2011年に『女々しくて』が大ヒットして一躍有名になったゴールデンボンバー(以下、金爆)ですが、Twitterが広まったのも同じくらいの時期で、多くの芸能人がアカウントを持ち始めました。
反面、キャラクターを演じ切ることにこだわる姿勢はもはや古くなってしまい、むしろ今日の夕食の写真などをアップした方がファンに受けるようになり、「えっ、そんなすごい格好でラーメン屋に行ったの?」みたいなバンドマンのブログが大量に現れました。
そんな中、雲の上の住人になるのではなく、あえてファン目線からヴィジュアル系を弄りまくり、タブーとされていたようなことを堂々とやってのける金爆のパフォーマンスは、時代性に合っていたのだと思います。だから逆にいえば、1990年代にデビューしていたら恐らくあまり売れなかったように感じるのですね。まあ、これは勝手な憶測ですが。
・そもそもバンドじゃない、という自由度
エアバンドということで、ボーカルの鬼龍院 翔さんだけはちゃんと歌っているものの、他のメンバーは全員が楽器(これもまた、段ボール箱で造った偽物)の当て振りをしたり、それすらもせずに踊ったりスイカの早食いをしたりするパフォーマンスについて、「ちゃんと演奏しろよ」という批判もあります。
ただ、実はこれは、的外れな指摘です。なぜかというと、金爆はバンドではなくパフォーマー集団だからです。そもそも「エアバンド」と自称していますからね。たとえエアギターがどれだけ上手くても、誰もその人をギタリストと呼ばないでしょう。「エアバンド」という言葉をキャッチコピーにすることで、実は「自分たちはバンドじゃない」と主張しているのですね。
そして、一部では「ヴィジュアル系を馬鹿にしている」と酷評されていましたが、実際はちゃんとしたヴィジュアル系バンドと同等以上に、精神的にヴィジュっているパフォーマーなのです。
かつて、ヴィジュアル系の黎明期に現れたXやBUCK-TICKがスプレーを大量に使って派手に髪を逆立てたりした理由は、とにかく目立ちたいから。金爆がエアバンドでバカなことばかりやっている理由は、ボーカルの鬼龍院さん曰く「100個バンドがあって、99個がカッコ良くて、1個だけカッコ悪かったら目立ちますよね(『情熱大陸』出演時の発言より)」。目立てば何でもいい、他所と違うことやる、はヴィジュアル系の基本。
ただ、さすがにここまでバンドを放棄したヴィジュアル系グループは、少なくとも広く大ヒットした中では初めてだと思います。このジャンルが誕生してから25年あまり、バンドじゃないことが売りの人たちが現れるとは。これだからオタクはやめられない。
この記事を書いた人
プラーナ
サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。
note(こちらでも、ゴールデンボンバーについて書いたことがあります)
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