池袋。学生の頃から通い倒した街の一つだ。新宿ほどの雑踏でもなく、渋谷のようにおしゃれな雰囲気はないが、おしゃれなビルのすぐ裏に怪しい路地があったり、私が通っていた頃から不思議な空気感を漂わせた街だった。はっきり言えば垢抜けない街。けれどなんとなく落ち着く街だ。もう10年以上足を運んでいないが、垢抜けなさは今も変わっていないはずだ。

池袋という街

学生時代、年齢がバレるが渋谷あたりではチーマーと呼ばれる若者が大きな顔をして歩いていた。私は時代遅れのロック・ミュージックにかぶれていたのでチーマーたちとの接触はまったくなかった。私もあちらもお互いに同じ匂いを一切感じなかったのだろうと思う。

そのうちチーマーは渋谷だけではなく、様々な街に出没するようになった。いや、それぞれの街でチームを自称する集団が増えていった、というのが正解だろう。チームにはそれぞれ個性があるようで、なんとなくスタイリッシュな雰囲気を漂わせていたり、これはヤンキーの集団とどう違うのかと首をかしげたくなるようなチームもいた。とにかくチーマーたちの全盛期だったのだろう。

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池袋の街でもちょっとやんちゃな集団を見かけるようになった。特に池袋西口公園あたりでは徒党を組んで、目を光らせているような少年や少女が増えた。もともと近くにファーストフード店やコンビニエンスストアがあったり、西口公園のベンチで彼氏と長時間おしゃべりしながら日向ぼっこをよくしていた私は、ここにもこういう連中が増えてきたか、と最初はぼんやりと眺めていた。

池袋ウエストゲートパーク

その後、石田衣良氏の『池袋ウエストゲートパーク』が上梓され、シリーズ化された。同名でドラマにもなり、略して『I.W.G.P.』と呼ばれ一大ブームが起こったのはもう15年以上昔のことになるのが信じられない。私もドラマが面白かったので原作を読み始めたクチだが、キャラクター設定などがかなり違う。文章だけであのスピード感、街の空気、そんなものを頭の中ですんなりと組み立てることができるのは、ひとえに石田衣良氏のリズム感の良さではないかと思うが、ここは小説評論や作家評ではないので詳細は省く。

池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX
長瀬智也
ジェネオン エンタテインメント
2000-10-25





この小説を読むのにふさわしい場所、それは一つしかない。池袋西口公園のベンチだ。たっぷり池袋を歩き回った後、缶コーヒーでも飲みながら公園のベンチでこの小説を読めば目の前の景色があっという間に小説のそれと重なる。本を読んでいるあなたの前をふっと主人公のマコトが歩いていてもまったく違和感がない。公園に横付けした車からキングが降りてきて、マコトとヒソヒソ話をしていても驚かないだろう。それだけのリアリティのある場所なのだ、池袋西口公園という場所は。

リアリティのあるフィクション

池袋西口公園に集まる人々は多種多様だ。恐らく外回りの途中に休憩しているのであろうサラリーマンや、目の前の東京芸術劇場へお出かけついでに日向ぼっこを楽しみながら世間話をする人たち。学校帰りの学生、そして見るからにやんちゃな若者たち。そんな人々のリアルな姿を横目に、フィクションの小説を読む。これはきっと楽しいに違いない。



ちなみに『池袋ウエストゲートパーク』は現在も続いており、本編が14冊、外伝が2冊上梓されている。主人公たちも皆大人になった。池袋の環境も変わった。だからといって彼らの個性は消えたりしていない。小説の中の彼らがどんなふうに変化していくのかを、これからも本が上梓されるたびに追いかけていきたい。

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旅と音楽と本が好き。別名義でWebライターとして活動中。
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