かつて、プロやアマチュアとか関係なく、ミュージシャンたちは小説や映画など、音楽以外のカルチャーから多大な影響を受けていた。ジャンルやカテゴリーによる垣根は薄かったように感じる。カルチャーは大きな波になり、ひとつの時代がつくられたりした。

ひとつの例を挙げよう。



1970年代半ば、その頃、主流であったテクニック重視の音楽シーンを壊したロンドン・パンクの代表、セックス・ピストルズでさえ文学大好き少年だった。21歳で亡くなり、その象徴的な存在となってしまったシド・ヴィシャスは元々、物静かな性格であり、幼少期からの本好きで、エドガー・アラン・ポーあたりをよく読んでいたらしい。

また、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)もインタビューで、文学ではいつもAだった……ウィリアム・ワーズワースやテッド・ヒューズ、オスカー・ワイルドの詩が好きだ……と語っている。イギリスの実質的な国家を小馬鹿にした「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン(God Save the Queen)」で「未来なんてねえよ!(No future)」なんて歌っていた奴がだ。

過去にはそれぞれの時代(ジェネレーション)を築いた文学があった

当然のようにそれらの波は音楽を含めた芸術全般に影響を与えた。時代の波というやつだ。いくつかの例を挙げてみる。

ロストジェネレーション(失われた世代)

1880年代中期から1890年代までに産まれた世代のことだ。1920年代から1930年代。第一次世界大戦によって様々ものを失って退廃的になった「やるせなさ」を指している。アーネスト・ヘミングウェイの初長編「日はまた昇る」の序文に引用されたことで広まった。F・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」、ウィリアム・フォークナーの「兵士の報酬」あたりがその代表的な作品だろうか。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
スコット フィッツジェラルド
中央公論新社
2006-11



ジャズ・エイジ

アメリカでの1920年代の「思いのままに快楽を興じた」文化などを表したものだ。F・スコット・フィッツジェラルドの「ジャズ・エイジの物語」が起源とされている。1910年代半ばから1920年代末期までに産まれた世代のことです。1950年前後に「法律や様々な過去の教えを守らない」ニューヨークのアンダーグラウンドに生きる者を、そんなふうに呼びれていた。主な人物としては、この言葉を始めてつかったとされるジャック・ケルアック、詩人のアレン・ギンズバーグ、文章をバラバラにしてつなげる「カット・アップ」という手法を駆使したウィリアム・バロウズ、など。

麻薬書簡 再現版 (河出文庫)
ウィリアム バロウズ
河出書房新社
2007-09-04



ジェネレーションX

1960年初頭から1981年始めまでに産まれた世代。これはそのままの「ジェネレーションX」(ダグラス・クープランド)という著述がある。ベトナム戦争やヒッピー文化を幼少期に見ていた世代だ。これらの流れに反して、政治や集団で行う社会運動に対して冷めているのが、その特徴と言っていい。





すべて、アメリカでの話だが、同じような傾向が他の国にも見え隠れしている。その国々によって事情は違う、ただ、まるで風に飛ばされた胞子のように世界各地へと運ばれていった。大なり小なり音楽だけでなく他のジャンルやカテゴリーに影響を与えたことは間違いないだろう。時代に生きる、生きている限りは時代には逆らえない。嫌でも時代に飲み込まれていく。そういうものだ。





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yosh.ash

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