ヴィジュアル系とその周辺の中でも、特に個性的なものや、まともな発想では産み出されなさそうなものが大好きなのですが、その中でも群を抜いてキテる感じの2枚をご紹介。

・UNDERGROUND SEARCHLIE(アンダーグラウンド・サーチライ)。

大槻ケンヂさんのソロ・プロジェクトとして、UNDERGROUND SEARCHLIE名義で、1998年4月に『スケキヨ』、5月に『アオヌマシズマ』と2ヶ月連続でリリースされました。

が、全然売れませんでした。そりゃあそうです、大槻さんご自身が著書『オーケンののほほん日記ソリッド』の文中で自ら書いていらっしゃいました、「売り上げ完全度外視」だと。名義にも顕れているように、アンダーグラウンドな世界観まっしぐら。



高校生の頃からずっとやり続けてきたロックバンド筋肉少女帯が空中分解状態になり、セールスやタイアップを求めてくるレコード会社にも辟易し、その数年前から患っていた心の病(当時、麻薬の幻覚作用に興味があり、面白半分にタイでマジックマッシュルームを食べたせい)も悪化、その結果、とんでもなく人を選ぶ作品ができあがってしまいました。この時期のゴタゴタは上述の『~のほほん日記ソリッド』、またはバンドブームの繁栄と衰退を綴った回顧録『リンダリンダラバーソール』に詳しく書かれています。




・こいつは踏み絵だ。リア充は買うな!オタクの輪にも入れない非リアのお前は買え!『スケキヨ』

スケキヨ
UNDERGROUND SEARCHLIE
MCAビクター
1998-04-22


まずは『スケキヨ』ですが、冒頭の2曲からもう、大衆受けを狙う気持ちは微塵もなし。ノイズサウンドに「彼女は丹念に糸を紡いでいる・・・」という囁きが延々と乗っかる『不必要にヒラヒラのついた服』(7分43秒)、テクノサウンドに「うわああああ!」「ひょえええ!」という喚き声が延々と乗っかる『彼女はメッサーシュミットに乗って』と、再生してから12分間ずっと囁きと喚き声しか聞こえないという。

カオスな12分間を抜けた次の曲『君は千手観音』。3曲めにして初めて、ボーカルがまともに歌っています。仏像オタクとして有名なみうらじゅん氏の作詞で、かつてテレビ番組で格闘家の佐竹雅昭さんらと共演した時の楽曲だそうです。「Come on KANNON! Come on KANNON! Ohhh!」というキャッチーなサビが印象的。ただ、今だと普通にアイドルの曲にありそうな感じですけどもね。当の大槻さんがももクロちゃんに歌詞提供している現代ですから。

後に筋肉少女帯でもカバーされる『Guru』で幕を閉じます。双子の姉妹との血まみれのロマンスを歌った美しいバラードで、「世界は、遊びとはいえない、殺し合いのような、キャッチボールなんだーーーっ!!」という悲痛な叫びが、意味はよくわからんけどジーンと来ます。後年に何度かカバーされていますが、自分はオリジナルのこのバージョンが好きです。筋少版では最後の叫びが省かれてしまっているし、セルフカバーアルバム『対自核-自己カヴァー-』のアレンジはかっこいいのだけど悲痛さが足りない。

まあ、売れる要素はゼロに等しい。『君は千手観音』だけはもしかしたらどこかのアイドルがうっかりそんな曲を出しそうな雰囲気はあるけど・・・あとの曲はもう・・・。

1998年当時でいえば小室ファミリーやミスチルとか聴いてるリア充は買うな!というか買ってもこんなの投げ捨てたくなるだろう・・・。今でいえばKANA-BOONやAlexandrosとか聴いてるリア充は買うな!教室の隅っこで厨二病小説を書いているラノベ作家志望の友達いないお前、そう、友達いないけどTwitterの鍵垢で講釈垂れてるお前みたいな奴が買え!・・・そんな内容です。 

・こっちはまだ大衆性が・・・、いや、ないわ。『アオヌマシズマ』 

アオヌマシズマ
UNDERGROUND SEARCHLIE
MCAビクター
1998-05-21


続編にあたる『アオヌマシズマ』です。 『スケキヨ』と比べ、こちらはまだ、まともなロックミュージシャンしている気がします。

GASTUNKというパンクバンドのカバー『ジェロニモ』でカッコイイ幕開け。続く『これが私の登山口』は、変拍子を多用した難解な曲をつくることで有名な、あぶらだこというバンドと共演。でも、サビ(だけ)はキャッチーなので割ととっつきやすいかも。

このアルバムで最高にキテるのは、真ん中に据えられた『埼玉ゴズニーランド』ですね。ほぼ全編、いわゆるアーティスト性を重視したがために売り上げを求めるレコード会社と対立し孤独に死んでいく男の悲哀、まあまんま契約を打ち切られてしまった当時の大槻さんの鬱々とした心情なのですが・・・、を歌い・・・、というか呻き上げた怪曲。

もう一度生まれ変わったら、
ポップで、売れ線で、
不特定大多数の大衆にわかる、

すぐに簡単に企業の偉い方に気に入って頂いて、
タイアップを頂ける、
そういう曲を沢山書いて
そういう作品をいっぱい作って、
そして自分の作品でお金を沢山いただいて、
そのお金で家族を
「埼玉ゴズニーランド」につれていきたい。

 

カラオケに入っていたりしますので、職場の2次会カラオケがクソつまらない時や、居場所のなさすぎる合コンから脱走したい時などに熱唱して反感を買いましょう。ちなみに埼玉ゴズニーランドには、モッキーゴウスやゴナルド・ボック、象のゴンボなどの愉快な仲間たちがいるそうです。

『De Do Do Do,De Da Da Da』はSTINGのカバーで、1980年当時、クールな印象しかなかったPOLICEのスティングがいきなり日本語でよくわからん歌詞を歌いだしたのが大槻さんにとって衝撃的だったそうです。原曲も聴いたのですが、そんなにネタにするほど可笑しくもないような。海外ミュージシャンの独特な日本語遣いというのだったら、ポール・ギルバート氏の『Boku No Atama』の方が好きかな。でも、この次の脱力フォークソング『がんばったがダメ』とのテンションの落差が凄いし、世界的ヒット曲をここまで大衆性ゼロにしちゃう大槻さんのセンスに痺れる。

「こちらはまだ、まとも」と書きましたが、うーん、ごめんなさい。前言撤回!やっぱ、こっちもまともじゃねーわ。

この記事を書いた人


プラーナ

henkou_ver

サブカル中二病系。永遠の14歳。大人のお子様。

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