ぷらすです。
今回ご紹介するのは『いとみち』(全3巻)ですよー!
青森市にあるメイド喫茶を舞台に、 身長146cm、津軽訛りと極度の人見知りがコンプレックスで、取り柄といえば祖母仕込みの津軽三味線という、萌記号の塊のような少女“相馬 いと“の高校三年間を描いた越谷 オサムさんの青春小説です!


物語をざっくり紹介


本作は2010年1月~4月まで 新潮ケータイ文庫DXに 連載された越谷 オサムさんの小説で、その後単行本→文庫本化されています。

主人公の相馬いとは身長146cmの高校一年生。
超のつく引っ込み思案の人見知りで、そんな自分を変えるために青森市に出来たメイド喫茶でバイトを始めるんですが、祖母譲りの津軽弁の訛りが抜けず「おかえりなさいませご主人様」がどうしても「お、おがえりなさいませ、ごスずん様」になったり、ドジを踏みまくるんですが、オーナー、店長、二人の先輩、店の常連客と触れ合ううちに、少しずつ成長していくという物語。

方言女子でちっちゃくてドジっ子、いつもオドオドしてる小動物的ないとは、まるで萌記号の塊みたいな主人公ですが、その他のキャラクターたちも彼女に負けず劣らずの強烈な個性の持ち主が揃っています。

このメイド喫茶のオーナーは、見た目完全に「ヤのつくお仕事」をされてそうな田舎のガハハ親父だし、メイド長の幸子年齢詐称の元ヤンでシングルマザー。
先輩メイドの 智美はいととは正反対のコミュニケーション強者だけど、そのぶん無神経でテキトウ。
唯一店長だけはマトモで人当たりの良い人だけど、どうも過去に何かあったらしい。

そんな一癖も二癖もあるメンバーに鍛えられ守られ、いとはゆっくり少しずつ成長していくのです。
ところがいとが店に慣れて仕事も楽しくなってきたある日、「ある事件」から勤務先のメイド喫茶が閉店の危機に。その時いとは……。
というのが1巻の内容。

続く「二の糸」では、高校二年生になったいとは閉店の危機を乗り越えたメイド喫茶で、祖母仕込みの津軽三味線の演奏で観光客や地元のお客さんの人気者に。
相変わらず「おかえりなさいませご主人様」がどうしても「お、おがえりなさいませ、ごスずん様」になっちゃうけどお店にも慣れ、友達の誘いで写真部に入部して前途洋々のハズなのに、いとの心は晴れません。
理由は、最近お店で先輩メイドとメイド長から避けられているような気がするから。
しかもクラス替えで、せっかく仲良くなった友達とは離れ離れになっちゃうし、あげく『あること』がキッカケで親友とケンカになってもう散々。
そんな相変わらず不遇な少女いとと、お店の人たちや友達との関わり、そして後輩少年“鯉太郎”との淡い恋模様を交えたストーリー。

そして完結編の「三の糸」では、3年に進級したいとと、後輩メイドで智美の妹チハルとの関係からスタートし、 2巻ではぼんやりと意識していた後輩少年、鯉太郎との恋模様や、県外大学への受験など、これまで登場したキャラクターたちをフューチャーしつつ、いとの少女期の終わりと旅立ちを描いています。

まるで萌えライトノベルのような設定ですが、その中身はいとが少女から大人になっていく様子をじっくりと、寄り添うように描いた傑作青春小説なんですね。(ライトノベルが悪いとかではないですよ) 
 

お婆ちゃんが大変なことに!


そしてこの三巻では、いとの祖母で津軽三味線の超絶プレイヤーハツヱさんが大活躍。
自分を心配する孫を安心させようと、七十九歳にして津軽三味線大会に初出場したのを皮切りに、誰もが知る「あの人」と共演し、ラストでは驚愕の展開に。
1巻から読み続けていた全国のハツヱマニア騒然です!

成長と旅立ち


1巻では、メイド服を着てみたかったという理由で「津軽メイド珈琲店」でバイトを始めた少女いとでしたが、三年間の歳月と経験がゆっくりと、しかし確実に彼女を成長。
その途中に見つけたある「目標」に向かって新たな一歩を踏み出していきます。
最初は接客もままならなかった、引っ込み思案で人見知りで泣き虫の彼女が、周囲の大人たちに守られ助けられながら、自分の意思で進むべき道を決める最終巻のラストはもうね、号泣ですよ!
娘の成長を見守ってきたお父さんになった気分ですw

そして、個性豊かだった喫茶店のメンバーや高校の友達も、それぞれの道を歩み始めます。
しかし、それは別れの悲しさや寂しさだけでなく、読者が登場キャラ全員に勇気を貰い、キャラクターたちのネクストステージへの旅立ちを応援したくなる。そんな爽やかで希望に満ちたラストなんですね。
この作品はまさに、越谷 オサムさんから僕ら読者への応援歌であり、僕らは、いとやその他のキャラクターを通して、前向きさや勇気を貰える。そんな物語なのです。

いとと同年代の人は彼女と同じ視点で、社会に出ている人たちは少し前の自分と重ねながら、いとの親世代は自分の子供の成長を見守るような気持ち、祖父母世代の人は孫を……と、どの世代の人でもきっと楽しめる作品だと思います!

興味のある方は是非!!



この記事を書いた人 青空ぷらす

今日見た映画の感想(映画感想ブログ)
note(その他、色々書いてます)

スポンサーリンク