ナツメミオさんのインタビュー。最後は「影響を受けた人物や作品について」の続きと、「これからの活動について」を尋ねてみました。


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影響を受けた人物や作品について

ものづくりに対する姿勢について

ナツメミオ:次に、ものづくりに対する姿勢において大きな影響を受けた方のお話をさせて頂こうと思います。たくさんの職人さん、デザイナーさんから刺激を受けているのですが、なかでも特に大きな存在は、ミナペルホネン(以下ミナ)のデザイナー・皆川明さんです。

――ミナ・ペルホネン(mina perhonen)。京都市にあるお店(寿ビルディング)には何度か行ったことがあります。

ナツメミオ:わあ、お店には行ったことがないのですごく羨ましいです……!お店にはなかなか足を運べないのですが、皆川さんは著書をたくさん出してらっしゃるので、それを繰り返し読んで、ミナのものづくりのことを勉強しています。

――町並みに溶けこんだ、古い建築物を眺めるのが好きなもので……とても、素敵なお店ですよ。

ナツメミオ:良いですねえ……ミナは、「せめて100年は続けよう」と始まったブランドなのだそうです。先ほどの話と繋がるのですが、私も「続けること」を大切にして作家活動を行っていますが、100年先のことまで考えているなんて……と本当に驚きました。

――せめて100年!現在ある世界的に有名ブランドでも100年以上、続いているものは少ないですよね。繰り返しの返答になりますが、驚愕です。

ナツメミオ:驚きですよね。そして、その100年愛されるようなブランドへと近づいていっている姿が、本当にすごいと思います。

――はい、凄すぎます。

ナツメミオ:皆川さんといえば、以前NHKの『プロフェッショナル~仕事の流儀~』で「プロフェッショナルとは?」という質問に対し
「使命と夢が、両方携えられていること。そしてそれは、自分の人生の持ち時間を超えるくらいのことである、ということがとても大事で。それをする時には、もう諦めのスイッチは切ってしまうっていう。なんか、そういう風にしていくってことが、プロだなあと。」

引用:皆川明(2016年10月17日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀  http://www.nhk.or.jp/professional/2016/1017/
と答えていらっしゃったのが、すごく印象に残っています。

――プロフェッショナルとかアマチュアの定義は横に置いておくとして、仕事(ブランド)に対して、ものすごく視点が広くて大きいですよね。

ナツメミオ
:そうですね。ものづくりをライフワークとして続けていくのであれば、そしてそれを、自分の人生の持ち時間が終わった後にも繋げていきたいと思うのであれば、(突然死なない限りは)出来なかったことが出来るようになる可能性は多分にあるのだなあと、そう思います。

――悟りを開いたような感覚になります。今日のおやつは何にしようかな……なんて考えている、わたしには……。

ナツメミオ:おやつも大事ですよ(笑)ついつい目先のことを考えて、「だめだ、こんなのできない。資金も無い。」と思ってしまいがちなのですが、そこで思考を止めちゃわないように、気を付けるようにしています。

――あぁ、とても、耳が痛い話です(笑)

ナツメミオ:私は作家活動を始めてまだたったの数年ですし、美術・デザイン系の学校で学んだ経験も無いので、未熟なのはある意味当たり前なんですよね。

――未熟。これもデザインに限らない話なのですが、専門的な勉強をしていないことは、その方のアドバンテージになる場合もあると思っています。もちろん、どのようなことでも最低限の基礎は重要だとは感じますが。

ナツメミオ:だからといって、その未熟さに甘えてはいては何もできないままなので、未熟であることを自覚して、出来るようになるためには何をしたら良いのかを考えて、学んでいかなくちゃなと思っています。

――学びは永久に求めていくものだと?

ナツメミオ:はい、デザインやものづくりだけに限らず、生きている限りは勉強期間だと思っています。とにかく作り(描き)続けること、そして学び続けること、その一番のお手本にしているのが、皆川さんです。

――お手本。目標と言ってもいいのですが、そのような方に出会えたことで、現在のナツメミオさんがいるわけですか……。

ナツメミオ:はい、目標の作り手さんですし、同じ時代を生きられていることを嬉しく思っています。まだまだ足元にも及びませんけどね(笑)少しでも近づけるよう、がんばります。

思い描いたデザインを形にする手段を身につけるということについて

ナツメミオ:最後に、思い描いたデザインを「形にする手段」を身につける、ということについて、一番影響を受けている方のお話をします。グラフィックデザイナーの井上のきあさんです。

――井上のきあさんですね。※参考 井上のきあ

ナツメミオ:私のTwitterを見ている方にはお馴染みの方かもしれませんが、私はAdobeソフトのほとんどをこの方の本から学びました。技術書を出しているデザイナーさんはたくさんいらっしゃいますが、のきあさんには「井上のきあ」という名前にブランド力があるという点に、大きな魅力があります。

――ブランド力というのは、単なるハウツー本になっていないってことですか?

ナツメミオ:はい。デザインが素敵ということももちろんなのですが、のきあさんの著書やツイートは、その場限りのテクニックだけではなく、「これができたら次はこれに応用できるよ」というのが、わかりやすく体系的に説明されているのが大きな特徴だと思います。少し大げさかもしれませんが、1つのメソッドを実践したら、10くらいのテクニックが使えるようになってる、というか。(逆に、「この方法だけ知りたいんだよ!」という方にとっては、少々まどろっこしく感じられるかもしれませんが) こんな感じで、のきあさんの発信されていることからは、学び方やまとめ方を教わりました。作りたいものができたとき、どこに着目したら良いのか・どこから手を付けていけば良いのか。のきあさんの制作姿勢からは、そういう視点をたくさん学んだように感じています。

――なるほど。

ナツメミオ:特に印象に残っている言葉は、以前インタビューでお話しされていたこんな一節です。
「やりたいことがあるなら、まずひとりでやってみましょう。ですかね。たとえどんなに仕上がりが貧相でも、とりあえずひとりでやってみる。自分ひとりでできないことは、人の力を借りてもできない。私はそう思います。人に手伝ってもらって、もっとよくなることはありますが。」

引用:クリエイターズステーション あの人に会いたい!Vol.60
http://www.creators-station.jp/seehim/764

――まずひとりで……やってみる……ですね。

ナツメミオ
:私は元々なんでもやってみたがる性格なのですが、この言葉で、より「まずは一人でやってみよう」という気持ちが大きくなりました。

――あ、わたしも、なんでもやってみたがる性格みたいなので、その気持ちには共感します。

ナツメミオ:もちろん、全ての事柄を一人で完結することは難しいんですけどね。でも、理論や技法を知ることで、誰かにお願いする際にも、どのように意図を伝えたら良いのかということや、その技術に対する価値もわかるようになります。それによって、自分の手掛けるフィールド以外の仕事に対しても、より敬意を持てるように感じています。まずは一人でやってみること、これからもそうやって色々な技術や知識に触れていき、作品に活かしていけたら良いなと思っています。

――多少、遠回りでも、とにかく前向きに進む……そういうふうに受け止めました。これで合ってますか?

ナツメミオ:そうですね、私はどちらかと言えば急がば回れタイプだと思うので、多少面倒でも、基礎部分をやるのはあまり苦じゃありません。基礎は単調なものなので、つまらないものだと捉えてしまうとそこで止まってしまうのですが、基礎を覚えるとどんどん応用方法が見えてくるので、遠回りしてでもやってみる価値はあると思っています。これは昔の自分への戒めも含めて、ですけどね。

※参考 ナツメミオさんが、一番お世話になっており、何度も読み返している本を挙げてもらいました







Illustrator ABC
井上 のきあ
エムディエヌコーポレーション
2013-06-24





これからの活動について

今後、やってみたいこと(予定していること)は何かあります?

――レーベルChu-cool(チュクール)で、さまざまな活動の幅を広げているナツメミオさんですが、これから先に何かやっていく予定などはありますか?

ナツメミオ:個人制作としては、テキスタイルを作りたいです。

――ここまでの話を聞いていると自然な流れのように感じます。

ナツメミオ:布のパターンから手がけて、型紙を起こし、Chu-coolのアイテムを作る、というのが目標なのですが、なかなか進められていなくて。

――ん? なぜですか?


ナツメミオ:単純に、技術不足というのが一番の理由ですね。あと資金面の問題もありますし。今は在庫を持たずに布小物を作るサービスもたくさんできているので、それらを利用すればすぐにでも実現できなくもないのですが、これだと型紙からは作れないので、あまり積極的には手が伸びないのです。

――なるほど。技術不足は、これまでの話を聞いていると絶対に乗り越えられると感じましたよ。それに「わたし(の技術)はまだまだだ」という気持ちを持っているのは、とても良いことだと思っています。技術は、知識などを加えたスキルと言い換えてもいいでしょう。

ナツメミオ:だと良いのですが……最終的には、自分のデザインした布でお洋服を作れたらなと思っていますが、私の技術的に、いきなりそこまで行くのは難しいので、少しずつ進めたらなと。例えばコースターやランチョンマット、バッグなど、身近で生活に密着しているものから、作っていけたらなと思っています。

――布地の型紙ですか……そういうコダワリは大切にして欲しいと思います。ぜひ、実現への道が見つかるといいですよね。他に、何かありますか?

ナツメミオ:クライアントさんとのお仕事としては、文芸書の表紙を描いてみたいです。ストーリーに沿ったパターンを作って、装画やしおりなどにできたらなと。

――本の表紙。ストーリーに沿ったパターンをデザインしたもの……とてもイイですね!

ナツメミオ:テキスタイルメーカーさんの既存柄を用いた限定カバーなどを、夏の文庫本フェアなどの時に時折見かけるのですが、通年で使ってもらえる『その作品のためだけのパターン』が作れたら良いなあと思って。

――それは、有りそうで無い視点ですよね。

ナツメミオ:本屋にはしょっちゅう足を運んでいて、文芸書の表紙などもチェックするようにしているのですが、意外と無い……と思うんですよね。私のリサーチ不足かもしれないのですが。可能であれば、ブックデザインごと手がけてみたいです。それには文字や紙やインクなどへの知識がもっと必要ですけどね。

――強く願えば……叶うと思います(断言)。

ナツメミオ:叶いますかね…?(笑) まずは勉強しながら、これまでに作ったパターンで書影サンプルを作ってみようかなと思っています。これからも勉強を重ねながら、たくさんの作品を制作していきます。

――楽しみにしています!……このあたりでインタビューを終わりにしたいと思いますが、何か、付け加えることはありますか?

ナツメミオ:最後までお読み頂きありがとうございました。また、インタビューを企画してくださったyosh.ashさんにも、心から感謝致します。今後も様々な経験を積んで、変化を受け入れながら、成長していけたら良いなと思っています。今後ともよろしくお願い致します。

――いえいえ、とんでもないです。とても、楽しかったです。こちらこそ、よろしくお願いします。そして、何よりも貴重な時間を、ありがとうございました。

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まとめ

ナツメミオさんの話で印象に残ったのは「継続は力なり」でした。ありきたりな文章かもしれません。ただ、継続を維持する意志は、並大抵の気持ちでは無理です。毎月、ネットプリントで配信していたカレンダーにも「継続は力なり」が背景にあるんだな……と感じました。わたしは、継続も、ひとつの才能だと思っています。

文責:yosh.ash

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