ナツメミオさんは2016年に毎月のカレンダーをネットプリントで配信。Instagram上で発表しているスケッチは「ほぼ日手帳公式ガイドブック2017」にも掲載されました。個人レーベルである「チュクール/Chu-cool」ではパターングラフィックのデザインに収まらない範囲の活動を始めようとしています。今回のインタビューは過去を含めた現在の「ナツメミオ」、そして、将来の道筋などに切り込んでみました。

webページ:http://chucool.web.fc2.com/
Twitter:@misosJP
Instagram:@misosJP
midashi_03

カレンダーについて

カレンダーをやろうと思ったきっかけは?

――昨年(2016年)、ネットプリントを利用したカレンダーを毎月、作成していて「すごい……」と感じていました。何か「これ」といったきっかけがあったのですか?

ナツメミオ:以前から、パターングラフィックを用いた作品を定期的に発信していきたいなと思っていたのですが、どんな形にしていくのがよいのかと、色々と迷っていました。そんなとき、Instagramでネットプリントのカレンダーを見かけました。
『パターンを大きく配置できること』
『生活に密着したアイテムであること』
『使い手によって好みの使い方をすることができること』
など、カレンダーの配信は自分の求めていたスタイルに合致するなと感じ、配信してみることにしました。

――なるほど。Instagramがきっかけとは意外でした。

ナツメミオ:最初は「すでに配信されているネットプリントカレンダーにはマンスリータイプのものが多いから、バーチカルのものを作ってみよう」という単純な考えで、バーチカルタイプのカレンダーから作り始めました。あまり無い形式のカレンダーの方が、目に留めてもらえるかなと思ったんですね(笑)

――いやいや、目立つことは重要ですよ(笑)

ナツメミオ:ですよね(笑) 現在は、使ってくださっている方々から頂いた意見を反映して、マンスリータイプを含めた全3種類で展開しています。様々なライフスタイルに合わせて、カスタマイズしながら使って頂けているようで、とても嬉しく思っています。

ネットプリントを利用しようと考えたのはなぜ?

――ネットプリントを活用したのは、やはり、Instagramがきっかけになるんでしょうか……個人間で売買できるサービスもいろいろとあって悩みませんでした?

ナツメミオ:ネットプリントを利用した最大の理由は、在庫管理の必要が無かったからです。本や画材に占拠されていて、物を置けるスペースが限られているので……(笑)

――たしかに在庫を抱えるのはリスクを伴いますからね。発送も面倒ですし(苦笑)

ナツメミオ:ええ、家は本当に本だらけで。在庫を置く場所が本当に無いんです(笑) また、Instagramには、ハッシュタグを辿って好みのネットプリント作品を探すという文化があるため、見てもらえる確率が高くなるかなと思ったのも、理由のひとつです。

――なるほど。Instagramのハッシュタグは文化として定着していますよね。情報の拡散という点では魅力的なSNSです。(注)2017年3月現在、説明文を入れた場合、ハッシュタグの上限は30個

ナツメミオ:ハッシュタグは、プリントした方がどんな風に使ってくださっているかを見ることができるのも嬉しい点ですね。ネットプリントが流行するにつれ、「ネットプリントは作った人にお金が入らない」「クオリティの高いものは、配布するのではなく売るべき」という声も聞かれるようになっていますが、私は個人的には、それを差し引いてもメリットがあるなと思っています。たしかに、プリント枚数分の金額が毎月自分の手元に入ったら嬉しいですけどね(笑)

――どこかが新しいWebサービスを始めるのに期待しましょうか……例えば、YouTuberのネットプリント版みたいなサービスを(笑)

ナツメミオ:そんなサービスが出来たらありがたいですね(笑) でも、カレンダー配信を通じてお仕事を頂いたりということもありましたので、基本的には「楽しんでもらえる広報ツール」だと思って、利用しています。

――立派な広報ツールじゃないですか!ネットプリントを利用した好例だと思います。


どうやって制作しているんですか?

――それでは少し深い質問をさせていただきます。どのようにしてつくっているのかは、ナツメミオさんのカレンダーを楽しみにしている方や、制作する方の両方に興味があるのでは?と。あ、もちろん、企業秘密な部分はお茶を濁してください(笑)

ナツメミオ:パターンを考えるのは基本的に紙の上です。カラーペンや筆ペンなどでざっくりとモチーフを描いて、その月のパターンの方向性を探ります。

――最初は紙なんですね。


ナツメミオ:ええ、最初からデジタルで絵を描くことはあまり無いんです。ラフを描いたらスキャンして、それをAdobe Illustrator(以下イラレ)上でレイアウトします。イラレは座標を設定して簡単に正確にモチーフを配置することができるので、パターンの設計を考えるのにとても便利なんです。この段階で、繰り返しユニット(タイルのようなもの)のレイアウト、繰り返し方法、配色などを大体決めます。こうしてラフパターンができます。

――ふむふむ。

ナツメミオ
:ラフパターンのままではモチーフの描画がざっくりとしすぎているので、繰り返しユニットを一度出力し、トレース台を使ってペンで紙に描き起こします。このとき色ごとに分けて描いていく(版分け)のですが、着彩はイラレ上で行うため、全て黒1色で描き起こします。版分けしたものを再度スキャンし、イラレ上でパターンとして組み上げて、必要に応じて調整を加えて完成となります。

――え?まさか、そんなに工程が多いとは想像していませんでした……。

ナツメミオ
:改めて書き出してみると、ものすごくまどろっこしいですね(笑) こんな感じで、アナログ→デジタル→アナログ→デジタル…と何度も行き来しながら描いています。

――はい、今、動画で説明して欲しい気分です(笑)

ナツメミオ:動画(笑) でも、私にとってのデジタルソフトは、綺麗に線を引ける烏口や、描いた物を正確に移動させられる方眼紙のようなものなので、アナログ作業の時に定規やペンを持ち変えるような感覚で、制作過程内で何度も行ったり来たりしています。

――アナログ作業の時に定規やペンを変えるような感覚って、興味深いですね。他にもイラレでデザインなどをしている方が多くいますが、どのように制作したり、どのような感覚でデジタルと向き合っているのか知りたくなりましたよ。アナログとデジタルに対する立ち位置みたいなものを教えていただけますか?

ナツメミオ:アナログとデジタルに対する立ち位置については、ネット上でも論議が起こりやすいテーマだなと思うのですが、私はどちらが優れているとか劣っているとか、そういうことはあまり思わないです。使いやすいように適材適所で使っていく、それだけです。ただ、アナログでの作業がわかっていると、デジタルでの作業を構成しやすいというメリットはあると思いますので(アナログの仕組みがわかれば、どのツールを使えば良いかがわかるので)、可能であればアナログ画材も使ってみると良いんじゃないかなと思います。

最も苦労している点は?

――完成まで、カレンダーの場合でしたらネットプリントにデータをアップするまでに、何か苦労していることはありますか?

ナツメミオ:告知用の記事を書くことと、配信に合わせてヘッダーやトップ画像を新しいものに変えることですかね(笑)

――いきなり、そこですか?(笑)


ナツメミオ:作る過程は苦じゃないんですが、事務作業で長時間PCに向かうのはあまり得意ではないんです。告知画像はデザインの一部だと思って作っているので楽しいのですが、ブログなどに文章を書くのがどうも苦手で……(笑)

――得意ではないと言ってますけど、傍目から見ている分には「しっかりと宣伝しているな……」と毎月、感じていました。これまた、意外です。でも、告知や宣伝は重要ですもんね。告知する際に気をつけていることはありますか?

ナツメミオ
:そうですねえ……ひたすら情報を流す、ということくらいでしょうか。SNSのユーザーさんたちはそれぞれネットを使う時間帯が違うので、多少しつこくても、同じ情報を複数回流します。逐一チェックしてくださっているという方は、稀ですから。フォロワー数が増えていっても、基本的には見られていない情報の方が多い、と思って、SNSと付き合っています。

――確かに。大半のSNSは、情報がタイムラインに流れていきますからね。

ナツメミオ:また、先ほども書きましたが、告知画像も作品の一部だと思って作っています。目に留まったり、あ、いいなと思ってもらえるデザインにしていけたらなと思って、試行錯誤中です。でも、カレンダーの告知画像に関しては、レイアウトは滅多に変えません。共通項の多いもの(背景のパターンは変わりますが)の方が、「この人の告知だ!」と、ぱっと見で分かってもらえる可能性が上がると思うからです。同様の理由で、シンボルマークとして使っているミジンコのイラストも、毎回使うようにしています。

――シンボルマークのミジンコ。しっかりと頭に焼き付いていますよ(笑)

ナツメミオ:それはよかったです(笑)ただ、私は固い告知文を書いてしまいがちなので、告知の手段云々の前に、もっとフレンドリーな文章が書けたらいいのにな、とも思っています。


中編に続く→

スポンサーリンク