1967年に、アレサ・フランクリンはシングル「ナチュラル・ウーマン(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」を発表した。彼女の代表曲のひとつだ。1971年、キャロル・キングも超名盤「つづれおり(Tapestry)」のラストに「ナチュラル・ウーマン」を収録している。

「ナチュラル・ウーマン」はキャロル・キングとその夫(後に離婚)ジェリー・ゴフィンが作詞と作曲をした。つまり、アレサ・フランクリンが先に歌ったものを、あとで作詞&作曲したキャロル・キングが歌った……ということだ。

どちらが素晴らしい?

アレサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」

 

「クイーン・オブ・ソウル」と呼ばれたアレサ・フランクリンは、ゴスペル色の強いシンガーだ。雑誌「ローリング・ストーン」に掲載された、歴史上最も偉大な100人のシンガーでは堂々の1位。2位はレイ・チャールズ、3位はエルビス・プレスリー、4位はサム・クック、5位はジョン・レノン、6位はマービン・ゲイ、7位はボブ・ディラン、8位はオーティス・レディング、9位はスティービー・ワンダー、10位はジェームス・ブラウン。

ここまでアレサ・フランクリン以外は全員、男性シンガー。女性は17位のティナ・ターナーまで誰もいない。この順位、確かにソウル寄りのランキングだ。それでも、凄い。いくらアメリカの雑誌とはいえ、1位は凄すぎる。

5CD ORIGINAL ALBUM SERIES BOX SET/ARETHA FRANKLIN
ARETHA FRANKLIN(アレサ・フランクリン)
Warner Music
2010-02-27



キャロル・キングの「ナチュラル・ウーマン」



キャロル・キングは歌手としては遅咲きだった。デビューは1950年代の終わり。シングルを何曲か出すが売れなかった。1960年代は、歌手ではなく、曲を作る側として成功した。有名な曲としてては1962年にヒットした「ロコ・モーション」あたりかな。

曲作りで名前を知られた彼女は再びシンガーとしての道を歩んでいった。1970年に1stアルバムの発売、そして、2ndアルバムの「つづれおり」が大ヒットした。音楽評論家に絶賛され、1970年代の女性シンガーソングライターとして認められた。アメリカのアルバムのチャートで1位を取り、グラミー賞の主要4部門を総ナメする。

人生で2つも山があるなんて珍しいよね。カーリー・サイモンやジョニ・ミッチェルと共に、1970年前半の女性ミュージシャンの代表格として音楽界を引っ引っ張った。日本のミュージシャンでも、好きなレコードに「つづれおり」を答える人は少なくない。1970年代の名アルバムというだけでなく、後世に残る名盤だと思う。

つづれおり
キャロル・キング
SMJ
2013-03-06



「ナチュラル・ウーマン」の意味は?

「ナチュラル・ウーマン」はラブソングだ。悲しい別れの物語でも、過去の恋愛を思いだすような感傷的な話でもない。あなたに出会えて嬉しい、という想いがつまった歌詞だ。この「ナチュラル」。日本語では、素直な、とか、自然な、普段のままの、飾らない、ありのまま、などと訳されていることが多い。

You make me feel like a natural woman.

歌詞の全体をみると「You」への愛しい気持ちに満ちている。実にストレートな歌詞だ。あなたに会うまでは毎日が退屈だったけれど、今はとても幸せでいっぱい……そんな言葉が並んでいる。まるで10代のような純粋さだ。わたしらしいわたし、みたいなニュアンスが近いと思う。

歌い継がれる名曲「ナチュラル・ウーマン」

多くのミュージシャンにカバーされている。有名どころではセリーヌ・ディオン。1995年にシングル化した。その他には、ボニー・タイラーやホイットニー・ヒューストン、など。変わったところではテレビ番組「グリー(Glee)」の第5シリーズでも使われた回があった。

最強のカバーは、わずか2枚のアルバムでイギリスの正統派歌姫まで登りつめたアデル(Adele)だと思っている。アコースティックギター1本に合わせて、リラックスしたアデルが歌うのだけれど、これがとんでもなく絶品。まだ若いので、これからも楽しみな存在だ。

ただ、どのカバーもアレサ・フランクリンとキャロル・キングを超える域にはない。原曲が一番良いに決まっている……そんな先入観は抜きだ。2015年に、ケネディ・センター名誉賞を受賞したキャロル・キングにアレサ・フランクリンが「ナチュラル・ウーマン」を捧げた。とても、素敵だ。圧倒される。



どちらが素晴らしい?。

回答は簡単。どちらも素晴らしくて素敵……これが間違いなく正答。「ナチュラル・ウーマン」は、これからも歌い継がれていく名曲だ。それにも間違いはない。

この記事を書いた人

yosh.ash

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