ぷらすです。
日本を代表する映画監督の一人、鈴木清順さんが今月13日東京都内の病院で亡くなられたそうです。
僕は熱心なファンというわけではないんですが、今回は追悼の意味も込めて監督の代表作「ツィゴイネルワイゼン」をご紹介します。



概要とあらすじ

 内田百間の「サラサーテの盤」などいくつかの短編小説をもとに、夢と幻が交錯するなかで狂気にとりつかれた男女の愛を描いた幻想譚。
80年、東京タワーの下に建造されたドーム型の移動式映画館シネマ・プラセットで上映されたことも話題に。日本アカデミー賞の作品賞ほか、ベルリン国際映画祭の審査員特別賞を受賞するなど国内外で高い評価を受けた一作。
ストーリー:大学教授の青地と友人の中砂は、旅先の宿で小稲という芸者と出会う。1年後、中砂から結婚の知らせをうけた青地は中砂家を訪れるが、新妻の園は小稲に瓜二つだった……。(映画.comより引用)

感想

本作は 1988年公開の「陽炎座」、1991年公開「夢二」(91)と並ぶ、鈴木清順監督のロマン三部作の第一弾です。

鈴木清順とは


鈴木清順監督は大正12年生まれ。享年93歳でした。
昭和18年に学徒出陣で出兵し、21年に復員。
終戦後の昭和23年、松竹大船撮影所の助監督として入社し、29年に友人の進めで日活に移籍します。
31年「勝利をわが手に」で監督デビューし、以降、日活専属監督として「東京流れ者」「けんかえれじい」など40本の作品を監督。モダンで新鮮な色彩感覚と映像リズムによる独自の世界観は『清順美学』と称され、一部に熱狂的なファンを獲得します。
しかし、その強すぎる作家性から日活上層部と対立し43年に解雇。
その後、昭和52年に「悲愁物語」でカムバックを経て、昭和55年(1980年)に公開されたのが本作「ツィゴイネルワイゼン」です。
他に、アニメ「ルパン三世」の監修をしたり、俳優として映画、ドラマ、CMなどにも多数登場しています。

現実と夢、死と生の境界が曖昧な掴みどころのない作品


本作、「ツィゴイネルワイゼン」は「サラサーテの盤」をメインに内田百間の幻想小説の短編からエピソードを組み合わせて膨らませた作品だそうです。
サラサーテ自奏の"ツィゴイネルワイゼン"のレコードには、演奏中サラサーテの呟きが入っているが、何を言っているのか何度言っても聞き取れないという中砂のセリフから本作はスタートします。
ちなみに、このレコードは実在するんだそうですね。

放浪癖があり骨マニアで女癖の悪い男 中砂(原田芳雄)と、その友人で気弱で真面目な教授 青池(藤田敏八)の二人を中心にしたストーリーで、最初のうちは身勝手で自由奔放な中砂に青池が振り回されているんですが、徐々に青池を取り巻く現実と夢(妄想)や生と死、彼岸と此岸の境が曖昧になっていくという幻想的で不気味な作品です。

サスペンス、ミステリー、オカルトなど、どんな風にでも解釈可能な作品で、物語同様なんとも掴みどころがない映画なんですよね。
一見ストーリーの流れと関係のないイメージ的なカットやギャグシーンが差し込まれたかと思うと、いきなり劇中の時間が何年も飛んだり、セリフも繋がりや意味があるようなないようなだったり、セットが急に演劇的な空間に変わったり。
観客は、そんな清純マジックに惑わされているうちに、気が付けば青池同様にもう戻れない“何処か“に迷い込んでしまったような感覚に囚われるんですね。
僕が今まで観た映画で言うと、寺山修司や唐十郎などのアングラ演劇やアレハンドロ・ホドロフスキー作品に近い感じがしました。

テントで上映?


本作は冒頭、"1980年シネマ・プラセットVol1"というクレジットが出ます。
調べてみたところ、この映画元々は既存の映画館での上映じゃなく、映画製作と興行の一体化を目指した映画プロデューサー、荒戸源次郎によって設立されたシネマ・プラセットの手がけた作品第一号で、エア・ドーム式の移動映画館シネマ・プラセットで上映されたんだそうです。
エア・ドーム式の移動映画館というのはどんな感じか想像もつきませんが、既存の映画館とは違った演劇やサーカス的な感覚で本作を観るのは、なんていうか「観る」というより「体験」する感覚だったのかなー? なんて思ったりしますね。

原田芳雄&藤田敏八の色気


本作の主役は原田芳雄と藤田敏八です。
原田芳雄といえば、ワイルドな男の色気のある名優ですが、本作で演じた中砂は乱暴で身勝手な風来坊で「男」というより「オス」という感じ。
それでいて、どこか弱さや孤独、繊細さを感じさせる複雑なキャラクターですが、原田芳雄はそんな中砂を見事に演じきっていました。
一方、そんな中砂に振り回されながら、それでも中砂に憧れや嫉妬めいた感情を持つ神経質そうな男 青池を演じるのは藤田敏八。
役者というより監督や脚本家が本業の人で、決して美男子ではなんですが原田芳雄のワイルドな魅力とは真逆の、知的な大人の魅力がありましたねー。
さらに、この二人に深く関わる芸者の小稲と中砂の妻になる小稲に瓜二つの園(その)の二役を演じた大谷直子は、美しく妖艶で観ていてドキドキしてしまいました。

そんな感じで、感想というには読んでも内容がまったく掴めなかったかと思いますが、迂闊に踏み込んだことを書くとネタバレになりそうなので、ざっくりと表面的な情報だけ書きました。

観終わったあと「え、どういうこと!?」ってなるかもですが、それも含めて鈴木清順作品の魅力だと思いますw

興味のある方は是非! 

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