『Memories of a Color(メモリーズ・オブ・ア・カラー)』はStina Nordenstam(スティーナ・ノルデンスタム)のデビューアルバム。1991年に発売された。スティーナ・ノルデンスタムがスウェーデンの森の奥で歌っていると錯覚しまう名盤だ。

Memories of a Color


1曲目の「Memories Of A Color」で森へ引きずり込まれる

スティーナ・ノルデンスタムの声は儚い。まるでカバーガラスのようだ。顕微鏡につかう、スライドガラスの上にのせる、ものすごく薄いガラスを思い出して欲しい。1曲目の「Memories Of A Color」。10秒ぐらいの短いイントロが終わると、聴こえるのは今にも消えてしまいそうなウィスパーボイスだ。スティーナ・ノルデンスタムの住む森の奥へ引きずり込まれていく。

8曲目の「Soon After Christmas」で森林の闇に溶ける

一気に時計は進む。アルバムは8曲目「Soon After Christmas」でピークに達する。スティーナ・ノルデンスタムがつくる音場の気温は低い。湿り気は凝結して個体になる。アルバムに収録されている曲は、それぞれが微妙に形が異なる氷の結晶なのかもしれない。「Soon After Christmas」。ピアノがメインのシンプルなアレンジだ。名曲だと思う。聴いている者を森の闇に溶かしてしまう。

Memories of a Color
Stina Nordenstam
Atlantic UK
1992-12-09




『Memories of a Color』の収録曲

  • Memories of a Color
  • The Return of Alan Bean
  • Another Story Girl
  • His Song
  • He Watches Her from Behind
  • I'll Be Cryin' for You
  • Alone at Night
  • Soon after Christmas
  • A Walk in the Park

捨て曲はない。もう一度、最初の曲からリピートする。何度も森の奥へ入ってしまいたくなる。

スティーナ・ノルデンスタムの底知れない魅力?魔力?



スティーナ・ノルデンスタムはスタジオワーク中心の活動をしている。ライブどころか、インタビュー記事さえ少ない。1994年の『And She Closed Her Eyes』は、デビュー作をさらに森の奥へと向かったアルバムだった。スティーナ・ノルデンスタムの声が精神世界(聴く者の魂)をチクチクと揺さぶる。スティーナ・ノルデンスタムは2ndアルバムで凄みを増した。

「Little Star」が、レオナルド・ディカプリオ主演『ロミオ+ジュリエット』の挿入歌に選ばれたとか、ミュー(Mew)の出世作『Frengers』に参加したとか、デイヴィッド・シルヴィアンのユニット、ナイン・ホーセスで共作したりとか、そういう情報は些細な塵だ。森林をつくる木々の落ち葉よりも小さい。スティーナ・ノルデンスタム魅力(魔力)は深淵だ。

And She Closed Her Eyes
Stina Nordenstam
Atlantic UK
1994-03-23


森の奥底からスティーナ・ノルデンスタムの音沙汰がない

スティーナ・ノルデンスタムは3枚目のアルバム以降、変化していった。変化を求めた、という表現が適切かもしれない。ただ、エクトロニカを取り入れたとしても、カバー曲ばかりのアルバムをつくろうとも、スティーナ・ノルデンスタムの色は消えなかった。あまりにも個の色彩が強すぎる。

2004年『The World Is Saved』が発表された。1stアルバムの香りがする。その後、新作の噂が流れたこともあったが、今日現在、スティーナ・ノルデンスタムの声は途切れている。きっと、森の時間は進みが遅いのだろう。そう、思いたい。忘れかけた頃に、スティーナ・ノルデンスタムの新譜が森の外へ出ることを待とう。待ち望んでいる者たちは全世界に数多くいるはずだから。


この記事を書いた人

yosh.ash

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